第367話 自身が刀匠だと、たまに忘れる孫
「良かった……魔力も無事に足りたみたいだ」
俺はふらふらしながらも、森の中の入口へと戻ってくることが出来た。
そしてその場に膝から倒れ込む……。もう直に彼女達も戻ってくるだろう。
ハーモニー達をひたすら地面越しに追いかけまわし、魔力も切らすことなく、何とか皮一枚つながったって感じか──っと、噂をすればだ。
「ただいま戻りました、カナデさん。あれ? えらくぐったりしてますね。
「お……おかえりハーモニー。すまない、立ってるのもだるくてな」
ちびっ子達を、こんな形で見上げる日が来るとは……。
何はともあれ、皆が無事に帰って来てくれて良かったよ。
「普段からやる気があんま見えん兄さんが、さらにダメ人間になっとるやないか」
「ルーム、それをお前が言うか? くっ……屈辱だ!」
普段はマジックアイテム作りばかりで、全然自室から出てもこないくせに。
そんな引きこもりからダメ人間扱いされてしまった!?
ハーモニーの持つマジックバックから顔を出すミコ。そんな彼女から、極めつけにこの言葉を頂いた。
「カナデ、ダメダメカナ!」っと。
「ミ、ミコまで……仕方がないだろ。魔力がかなり減ってるんだ、コレは魔力が減ってるせいだから、魔力が回復したら本気出すから!」
三人の視線が痛い。
顔を見れば分かる。驚いたことに、誰一人として今の言葉を信じていない……。
「そ、それで資料の方はどうだったんだ? 無事に入手は出来たのか?」
「はい、抜かりはありませんよ。この通りです!」
マジックバックから、何枚かの紙を取り出すハーモニー。そこには俺が夢で見た、あの時の設計図もあった──。
「あぁ、バッチリだ。おつかい成功だな!」
「おつかいですか~?」
「なんの事やねん?」
「あ……いや何でもない。それより、ここいらで食事にしないか? もう腹減って腹減って!」
幾度となく浴びせられる、ちびっ子達からの蔑むような視線。
冷たいその眼差しに、ゾクゾクする……癖になったらどうしよう。
何とか必死にごまかそうとする俺を見て、ハーモニーがマジックバックを俺に渡しながら「やれやれ~」っと呆れながらため息をつく。
「まぁいいでしょう。それでは、何を作りましょうか~?」
あぶなかった……何とかお許しを得たみたいだ。
さて、ここからは名誉挽回のチャンス──限られた材料で、最高の一品を出す!
そしたら俺の株も急上昇……って、本当これでいいのだろうか?
どちらにせよ、後に引きさがることは出来ない──!
「今回は俺に任せてくれ。材料に、これを使おうと思う」
俺は木の容器に入れた四つの入れ物を取り出し、蓋を開け、彼女達に見せつけた。
「え~っと……何かの粉末ですか? コショウとも違うようですね~?」
「あぁ、これも大きなくくりで言えば同じだな。香辛料やスパイスと言われるものだ」
「それを使って料理を作ると? 一体何を作るんですか~?」
ドリアードさんに相談し、コッソリ育ててもらた五種のスパイス。
カルダモン、コリアンダー、ターメリック、クミン。そして
日本育ちなら、これを聞けば自ずと予想はつくだろう──。
「あぁ、聞いて驚け!?」
ずっと作りたかった。
和食に負けず劣らず、思い入れのある料理。
まだ足りない材料は多いが、やっとここまでたどり着いた。
やっと再現できる。最低限だが、家庭の味を!
「俺が作る料理……その名も──カレーだ!!」
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