第364話 隠し事
「ラクリマに着く前に、二人には現地でやって貰いたいことの説明をする!」
ラクリマまで、後わずかの所。
馬車を走らせながら移動時間を効率よく使い、俺はハーモニーとルームに先延ばしにしていた今回の目的を伝える事にした。
「以前にも話したと思うけど、俺が意識を失っているときにシンシが夢の中で、彼自身の過去を見せてくれたことがある」
「はい。先ほど話題になったやつですよね~? 前に、塩湖で話してくれた」
「あぁ。あの時は別件で頭が一杯で、気にも止めて無かったんだが……」
当時、その事に気付いてたらこんな手間……いや、急いでいたし結局同じ結果だっただろう。
「その夢の中で、彼の家の地下通路に聖剣にまつわる資料が保管されているのを見た。それを思い出して……」
その中には聖剣である、シンシの設計図もあった──あの時、夢の中で確かに見た覚えがある。
それさえあれば、聖剣を打つ手掛かりに必ずなるはずだ。
「なるほど。つまり今回の目的は、その資料の回収なんですね~?」
「あぁ。墓荒しみたいで気が引けるが、その資料を片っ端から回収して欲しい」
問題はその手段だ。
見た夢が本当なら、あの広さは彼女達でもギリギリぐらいだ。
俺が入るのは厳しいだろう……。
今回は、その為にハーモニーとルームに来てもらった訳なのだが、問題は資料の山を外へと持ち出す方法だ──。
「ミコ。回収するために、マジックバックをハーモニー達に渡そうと思うんだが、そのまま俺と離れても効果は
「う~んカナ……」
腕を組み、頭を悩ませるミコ。
ずっと大事に使ってきた、大切なマジックバック。
それもハーモニーになら、信頼して預ける事が出来る。
「やった事は無いカナ。でもカナデが無銘を持ってて、ボクがマジックバックと一緒に居れば多分大丈夫カナ。ただ……距離が離れるほど魔力を沢山消費するはずだシ」
魔力を沢山消費する……嫌な台詞だ──。
「その魔力って……聞くまでも無くもちろん俺のだよな?」
「もちろんカナ! 沢山だシ!」
やっぱりか……。
沢山って一体どれぐらい数つもりなんだよ、彼女達が帰ってくるころには干からびてないよな?
「──所で疑問なんやけど、なんで兄さんは着いてけえへんのや? 来たら済む話しやろ?」
荷台の幌からちょこん、っと顔だけを出すルームの口から、触れられたくない話題が飛び出した。
「…………えっ?」
やっぱり来てしまったか。
あえてその事を話題にしなかったのに。3
普段は話を聞いてるか聞いて無いか分からないのに、こんな時ばっかツッコミを入れてきやがって。
さて、どうしようか?
ここで素直に「小さい子しか入れないから」っとか言ってみるか? いや……絶対ただじゃ済まないはずだ。
「カナデさん~? 何か隠してますね?」
「い、いや。別に隠してる訳じゃ……」
狭い御者席、ハーモニーはさらに俺との距離を詰め、上目遣いで睨みを効かせる。
どちらにしろ、現地につけばバレることだ。
秘密にしておく必要など全くないのだが、二人を怒らせない遠回しに言う言葉が出てこない……。
「──み、見えたぞ、ラクリマだ!」
しかし、つい誤魔化してしまった。
その後も二人は、言わずとも何度も問い詰めようと質問を繰り返すのだった……。
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