パラフィリア

藤宮舞美

アガルマトフィリア


 美しい人形はどんな芸術品、人間以上に美しい。


 甘く潤い、今にも話し出しそうな唇。

 艷やかで墨のように黒く、絹の様に高貴な髪。

 痩せ過ぎでもなく、太り過ぎでもない、理想の肉付の身体。

 泣いているかと思われる程魅入られる硝子の眼球。


 『完璧』に創られた美しさと、完璧故の『不完全さ』の美しさ。


 美に耽る。これを耽美と言うならばまさに耽美とはこの事だ。


 憎悪を覚える程の優美さには、この為なら金に糸目をつけない。否、犯罪に手を染めても構わない。それどころか、魂だって喜んで売ってやる。

 そう思わせる程までに魅入られていた。


 あゝ……


 あゝ……


 人間と人形。


 不可思議な人間の片思い。





 何処かで読んだ事がある。


 人間の妻を愛する為に努力をしたが、心から愛せるのは人形、唯一人。

 それを知った妻は人形を壊した。


 夫は壊れた人形をみるとそのままそこで、まるでばらばらになった人形と心中するかの様に、自殺していた。


 そんな物語。




 美しいものなら人間だろうが人形だろうが心を奪われる事はある筈だ。


 多くのの恋人が『一目惚れ』から恋愛をする様に。コレクターが『一目惚れ』で芸術品を買うように。美術館で魅入られ、しばらく時を忘れて動けなくなる様に。


 それが人間なら健全な『恋愛』となる。


 ならもし、それが物だったら?

 それは健全な『恋愛』ではないのだろうか。



 少なくとも立派な恋愛だとは思っている。


 愛とは無償の救いなのだ。


 その救いの先が人間でなければならない事はないのだ。


 キリストがそれは神への冒涜だと言おうが、釈迦がどれだけいけないことかと説法しようが、恋心を持ってしまえばその言葉に意味はなくなるのだ。


 人間の恋人と人形の恋人。

 人形も立派な花嫁である。


 恋人にんぎょうを見ると辛い事も全てを忘れて、ただ笑顔になれるのだ。




 人間は人形に恋煩いをしていれば良い。


 まさしく私がそうである様に。


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パラフィリア 藤宮舞美 @fujinomiya

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