6 最強の敵! アメリカ対地球!(前編)

 スシ・バー=エドッコにてオスシ・ディナーをとらんとした神風かみかぜ兄妹!

 大トロを食したルリが顔面爆発!

 コーン軍艦を注文したトオルは山本ヤマオ90歳と臨戦態勢!

 その時! 日本代表地球ファイターフジヤマ・サムライ丸の爪楊枝がその場をなごませる!




「なんじゃとこのサムライ野郎!

 年寄りだと思ってバカにしとんのか!」


 おお、場は和んでいなかった!

 サムライ丸の仲裁も虚しく、山本ヤマオの興奮は治まらない!


「そうじゃそうじゃ! 我ら後期高齢者を年寄り扱いしおって!」

「ヤマオ少尉! 鬼畜米英に正義のタケヤリを!!」


 悪ガキ老人三人組がワーワー!


「ええい! やかましい!!!」


 ギラリ!!


 サムライ丸の悪魔的眼光が三人を突き刺す!


「「「あびゃああああああああ!!!」」」


 殺人的殺気オーラを浴びた山本ヤマオ他は意識を喪失!

 白目をむいてその場に倒れる!


「おジジ共は寝た! 神風トオル! 隣に来い!」

「はいッ!!」


 恐るべき眼力! ただ者ではない!

 大人しくサムライ丸の横に腰掛ける神風トオル!


「貴様……父親から書状が届いたと言っていたな!」

「はいッ!!」

「なんと書いてあったのだ!」

「『決勝大会には来るな』と。父上の名と共に!」


 オチョコを傾けるサムライ丸!

 トックリで酒を注ぎ足す神風トオル!


「来るなというのになぜ来たのだ!」

「『来るな』ということは……父上がここにいるということ!

 会いに行くのは当然!!」

「バカタレ!!!」


 グシャリ!!!


 サムライ丸の鉄拳!

 顔面を打たれ床に転がる神風トオル!


「な、何をする!?」

「いいから隣に座れ!」

「はいッ!!」


 大人しくサムライ丸の横に腰掛ける神風トオル!


「来るなというのに来るとは何事か!

 この大会に参加するということは!

 その命が危険に晒されるということ!

 それをおもんぱかった父の親心、なぜわからぬか!!」

「それでも! 俺は父上に会いたかった!!」

「バカタレ!!!」


 グシャリ!!!


 サムライ丸の鉄拳!

 顔面を打たれ床に転がる神風トオル!


「な、何をする!?」

「いいから隣に座れ!」

「はいッ!!」


 大人しくサムライ丸の横に腰掛ける神風トオル!


「今のお前ではアメリカ大統領を倒すことはおろか……優勝すら不可能!

 今からでも遅くない! 栃木に帰って畑でも耕せ!!」

「うるさい!! 俺は逃げん!!

 ピザフライが父上を殺したというならば! 仇を討つのみ!!」

「バカタレ!!!」


 グシャリ!!!


 サムライ丸の鉄拳!

 顔面を打たれ床に転がる神風トオル!


「な、何をする!?」

「いいから隣に座れ!」

「はいッ!!」


 大人しくサムライ丸の横に腰掛ける神風トオル!


「その書状の真意! お前の父……

 !?」

「思わぬ! 父上が生きているならば!

 すでに俺達の前に姿を現しているはずだ!!」

「バカタレ!!!」


 グシャリ!!!


 サムライ丸の鉄拳!

 顔面を打たれ床に転がる神風トオル!


「な、何をする!?」

「どこまでも愚かな男よ……!

 もうよい! お前と話すことはない!!

 帰って早く寝ろ!!!」

「ああ言われるまでもない!! !!

 帰るぞルリ!!」

「あいっ! 兄上!」


 トオルとサムライ丸が話している間に――大トロを十貫食したルリ!

 熱いお茶をすすり満足気にトオルの後につく!


「マスター!」

「へい!」


 大トロ・スシを握り、自分で食べるエドッコ・マスター!


「明日の試合、俺が必ず勝つ!

 その時は! 改めてコーン軍艦を頼むぞ!」

「アイヨッ! アイヨッ! アイヨッ! アイヨッ!」


 コーン軍艦に必勝を誓い、神風兄妹が店を出る!

 果たして神風トオルは――強敵アメリカ代表を破ることができるのか!?



 ◆◆◆



 ――シン・巣鴨すがもコロシアム。

 会場には世界中から集まった100万人の観客。

 地球ファイト実行委員会が使用する管理施設を南側正面とし、東・西には地球ファイター入場用の堅牢な門が設置されている。

 特別席には各国要人や富裕層が優雅に座る。

 コロシアム外では地べたにレジャーシートを敷いて一般庶民がモニター越しに観戦。

 コロシアム最上階特設VIPルームからはアメリカ大統領がパツキン・デカパイ・カウガールを侍らせて見物。

 もちろん、手にはハンバーガーだ!


 グラウンド中央に進み出るのはヨビダシ・マスター、ニザエモン!

 白と黒のヨビダシ装束に身を包んだおごそか系ファッションだ!

 扇子を広げ、選手を呼び出す!


「にぃし~~! アトミック・ジョンんんんんん~~!」


 ゴゴゴ!


 分厚い西門が厳かに開き、アメリカ代表地球ファイターアトミック・ジョンが姿を現す!

 銀色に輝く爆弾ボディ!

 オシャレなデカめのサングラス!

 堂々たる歩み! 王者の威厳!

 国力の高さは態度のデカさである!

 観客がワーワー!


「「U・S・A! U・S・A!」」

「「U・S・A! U・S・A!」」


 米国人観客たちのU・S・Aコールが響く!

 アトミック・ジョンは手を振って応える!

 カワイコギャルには投げキッス!

 さすがは米国人! 余裕のよっちゃん的態度!

 本大会において! 最も優勝に近い男との呼び声は伊達ではない!


「ひがぁし~~! かみかぜ~とお~~る~~!」


 ゴゴゴ!


 今度は東門から地球代表地球ファイター神風トオルが入場する!

 黒ライダースジャケットにカッコいい指ぬきグローブ!

 靴はもちろん鉄板入りの安全靴だ!

 観客がワーワー!

 睡眠はバッチリ!

 朝食はデリバリー・スキヤキ!

 体調は万全! 100%の力が出せること受けあいである!


「がんばりませい! 兄上!」


 コロシアム正面の端っこに設置された運動会的テント。

 特別に用意されたセコンド席である。

 テント内は長机にパイプ椅子というまさしく運動会的内装!

 声を張り上げて応援する神風ルリ!

 隣接するテントには米軍セコンド!

 米国陸軍元帥、ブコロス・ファッカーサーを始めとする将校クラスが並ぶ!

 当然アメリカンドックを食べながら観戦だ!



「ドウゾ! ゴウショウさん!」

「おお、すまんな!」


 地球側セコンド席で瓶ビールを注ぎあうゴウショウとオカ係長!


「たこ焼きとから揚げ買ってきましたよ!」


 ホシ係員がツマミを用意する!

 にぎやかなセコンド席だ!


「君たち実行委員会事務局職員がいないと難しい事務手続きはわからんからな!

 今後ともトオルのためによろしく頼むぞ!」

「いえいえ! 仕事ですゆえ、お構いなく!」


 さりげなく二人の職員をねぎらうゴウショウ!

 地球真拳師範代は気が利くのだ!


「あいや! オノレら! ちゃんと兄上を応援しませい!」


 宴会状態の三人にセーラーJK服妹はプンスカである!


「兄上~! 兄上~!」


 神風ルリは一人、日の丸の扇を手に必勝の舞を舞うのであった!




「ヘイ! そこなジャパニーズ!

 この俺を倒し、我がプレジデントへ復讐するなど夢のまた夢!

 痛い目を見ないうちに棄権をススメルゼ!」

「世迷言を! いらん心配だ!

 貴様を倒し、ピザフライを討つ!!」


 アトミック・ジョンと神風トオルがにらみ合う!

 両者ヤル気満々!

 二人の熱気によりシン・巣鴨の気温が2度上昇!


「見合って見合って!」


 ヨビダシ・マスターと入れ替わり、

 戦いを取り仕切るマスター・行司、タチカワが号令をかける!

 黄金色の装束! やはりこちらも厳か系ファッション!

 手には軍配! 勝者へ向けられる神の道具である!

 シン・巣鴨コロシアム中央で神風トオルとアトミック・ジョンが向かい合って合図を待つ!

 二人の間は50メートル!


 試合開始の合図は本大会のために特別に用意された巨大な釣鐘!

 その鐘を鳴らすのは日本有数の高僧!

 万歳宗ばんざいしゅう! 突撃派とつげきは! 玉砕寺ぎょくさいじ! ゼンメツ和尚おしょうである!

 ゼンメツ和尚が樹齢一万二千年の神木より切り出した巨大な丸太を振りかぶり!

 スイング! 釣鐘をぶん殴る!


 ゴオオオオオオオオオオオオオンンンンンン!!!


 お見事!

 荘厳なる轟音的音色が地球規模で響く!

 第13回地球ファイト決勝トーナメント、記念すべき第一試合の開始である!!!

 両者が同時に駆け出し、一気に距離を詰める!


「とおっ!」


 最初の一撃を決めたのは地球代表神風トオル!

 正拳がアトミック・ジョンの脇腹をえぐる!

 が、しかし!


 ゴイン!


 鉄を殴ったような鈍い音!


「HAHAHAHAHA!

 そんな攻撃! きかナッシング!」


 アトミック・ジョンはノーダメージ!


(なんという硬いボディ!

 まるで鉄でできているようだ!)


 神風トオルが相手の硬さに驚愕した一瞬の硬直!

 それを見逃すアトミック・ジョンではない!


「必殺! アメリカンハンマー!」


 アトミック・ジョンの両拳がトオルの頭に振り下ろされる!


 グシャリ!!!


「~~ッ!!!」


 一般庶民ならば頭がスイカのごとくカチ割れ、モザイク必至のグロテスク的惨劇と化すであろう即死級の一撃!

 しかし!

 さすがは地球真拳継承者!

 神風トオルはこの殺人的攻撃をなんとか耐え、後方に跳び距離を取る!

 攻撃を受けた頭部から血が流れ、トオルの額を伝う!


(なんという重い拳……!

 まるで鉄でできているようだ!)


 少しでも気を抜けば霧散してしまいそうな意識を精神力でなんとか繋ぎとめる神風トオル!


「オウ! 今の一撃を耐えるとは!

 ジャパニーズ・ガマンは過労死デース!」


 この攻撃力! 防御力! アトミック・ジョンが優勢か!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る