3 非情なる記憶! ピザフライ対神風アキラ!

『主催者あいさつであります!

 あいさつを致しますのは我らが地球大統領!

 そして現アメリカ大統領でもあります、ミスター・ピザフライ氏です!』


 観客がワーワー!

 歓声を浴びながらプレジデント・ミスター・ピザフライが朝礼台に上がる。

 カウボーイハットからはパツキンの短髪が覗き、たくましいケツアゴが輝くハンサム顔。

 アメリカ人らしく身長2メートル50センチ!

 インクブルーの8億ドル高級スーツ!

 赤いネクタイには☆マークが散らばる……最新のアメリカンシャレオツファッションだ!


「ハローエブリワン!

 アイアムプレジデント!

 ファインセンキュー!

 アンドユー!

 ユーユアユー!

 シーハーハー!

 がんばってクダサーイ!」


 流暢なアメリカ語による見事なあいさつである!

 観客がワーワー!


「「U・S・A!U・S・A!」」


 観客の米国人からU・S・A! コール!

 絶大なる人気ぶりである!

 両手を上げて歓声に応えるピザフライ! そして!

 おもむろにフトコロからピストルを取り出し、なんと!


 BANG! BANG! BANG!


 発砲! 観客席に銃弾を撃ち込む! もちろんイントゥ実弾!

 一般庶民諸君もご存知のとおりアメリカは銃社会!

 この行為は米国人が最も喜ぶファンサービスなのだ!

 身分の高い者から銃弾を撃ち込まれる!

 これほど名誉なことはない! という狂気的思考である!


 BANG! BANG! BANG!


「「U・S・A! U・S・A!」」

「HAHAHAHAHA!」


 その朗らかなワビサビの時を破るように――男がピザフライの前に飛び出す!


「「――ッ!?」」


 即座に朝礼台の周りを囲むCIAエージェント!

 ピザフライの守りを固める!

 CIA拳銃の銃口が狼藉者を狙う!


「アメリカ大統領ピザフライ!!

 貴様に聞きたいことがある!!!」

「オウ! キサマは!?」


 ピザフライの前に進み出たのは――神風かみかぜトオルである!

 朝礼台上のピザフライをキッと睨みつける!


「俺は地球真拳継承者、神風トオル!

 貴様が俺の父……神風アキラを殺したというのは本当か!?」

「……ッ!!」


 コロシアム内100万人の観客がザワザワ!

 一気に緊張が高まる!

 果たして――ピザフライの答えとは!


「地球真拳……そして神風アキラ……実に懐かしい響きだ。

 いかにも! ユーアファザーをブッキリングしたのはこのミーよおおおおお!!!」


 ガビーン!!!


 覚悟していたとはいえ……トオルを襲う悪魔的衝撃!

 奥歯をギリリと噛みしめる!


「やはり貴様……!」

「あれは16年前! ミーはアメリカ代表地球ファイターだった!

 そして神風アキラは地球代表!

 地球真拳は地球最強の拳法の一つ!

 その使い手は早々に始末する必要があった……!」

「父が……地球ファイター!?」

「そう! 優勝するため……邪魔者は排除あるのみ!

 サバイバル期間中に神風アキラと立ち会い……ミーが勝利したのだ!!

 神風アキラを穴だらけのレンコンにしてなああああああああ!!!」


 ピザフライから聞かされたのは残酷なる顛末!

 しかし! 神風トオルにはまだ希望がある!


「だが……俺のもとには父からのふみが届いた!

 父は生きている!!」


 父からの筆文字をピザフライに突き付ける神風トオル!

 鼻で笑うピザフライ!


「HAHAHAHAHA! それはない!

 

 それに……そんな紙切れに信憑性などナッシング!

 ミーの知る限りでも……筆跡をコピーできる能力者は十人はいるわ!!!」

「そんな……!」


 力なく手紙を下ろす神風トオル。

 父が生きている!

 それを信じてここまで来た彼であったが――!


「父上……! 誰よりも強かった父上が……この男に……!」

「口で言ってもわかるまい!

 映像で見せてやろう!」


 ピザフライのかたわらに参上するスーツ姿の大柄な男!

 フルフェイスのカボチャマスクを被った異様なイデタチ!

 プレジデント親衛隊の一人である!


「こいつは記憶を他人に見せることのできる能力者!

 特別に一部始終を見せてやるわ!」


 パンプキンヘッドの両目が発光!

 記憶投射能力の発動である!


「――ッ!?」


 神風トオルの脳内に記憶が流し込まれる!

 16年前の……父とピザフライの戦いの記憶が!



 ◆◆◆



「やるな……地球真拳……!」


 若き日のピザフライ。

 この時はまだ大統領ではない。

 スーツのジャケットは焼け焦げ、シャツには血がにじむ。

 その身体はすでに満身創痍である。


「地球真拳は地球最強……!

 我が奥義、とくと見よ!」


 同じく在りし日の神風アキラ。

 短髪の頭には『神風』と書かれたハチマキが巻かれている。

 鉄紺色の道着は所々切り裂かれているものの、ピザフライに比べ肉体への負傷は少ない。


 二人の戦いは神風アキラ優勢で展開。

 今まさに最後の一撃が放たれようとしていた。

 ――その時である。


「待てい地球真拳!」


 突如現れたのはバッファローのフルフェイスマスクを被ったムキムキマッチョの大男。

 そして拘束された――桃色の忍び装束をまとったくノ一。

 神風アキラの妻、神風サクラである!


「な、なにい!?」


 この場にいるはずのない妻の姿に――動きが止まる神風アキラ!

 妻サクラの首元には極太注射器が当てられている。

 中には悪魔的な蛍光色を放つ液体!

 明らかに毒だ!


「神風アキラ! 少しでも動けばこの女の命はない!!」

「モガモガ!(あなた……ごめんなさい!)」


 夫とアメリカ代表地球ファイターの決闘を知り、駆け付けた神風サクラ。

 彼女は――子供達には黙っていたが――一流の忍。

 夫の邪魔にはならない自信はあった。

 だが――不覚にもピザフライの部下に拘束。

 口にサルグツワをハメられ、奥歯に仕込んだ自決用の毒も発動不能!


「おのれ……卑怯な!」

「HAHAHAHAHA! 貧弱な己の妻を呪うがいいわあああああ!!」


 ピザフライの悪魔的連続パンチ!

 無抵抗を強いられた神風アキラは全身の骨が砕かれる!


「……貴様の勝ちだ。妻だけは助けてくれ」

「モガモガ!(あなた……! しくしく!)」


 膝を付く神風アキラ。

 涙を流す神風サクラ。

 勝敗は決した――だが!


「HAHAHAHAHA! もはや抵抗できる力は残っていまい!

 バット! ミーは完璧主義!

 後顧こうこの憂いは断つ!」

「――ッ!?」


 ピザフライがパチンと指を鳴らしバッファローヘッドに合図!

 おお、なんということか!

 神風サクラの首に極太注射器が刺され、毒液が一気に流し込まれる!


「モガ~~~~!!!!(ンああああああああ~~~~ッッッ!!!!)」


 白目を剥きガクガクと痙攣けいれんするサクラ!

 穴という穴から血液が噴き出す!


「さ、サクラあああああ!!??」

「HAHAHAHAHA!!

 キサマの妻は腐ってもニンジャ!

 のちのち復讐なんぞされては面倒だからな!

 仕事はキッチリバッチリデース!!」

「貴様あああああああああああ!!!!」


 怒り狂ったアキラが青く輝く!

 持ちうる限りの――否、それ以上の地球パワーを解放!

 ボロボロに砕けた肉体を奮い立たせピザフライに殴りかかる!

 当たれば原子レベルで消滅するであろう地球パンチ! しかし!


「HAHAHAHAHA!! 冷静さを欠いた拳など……当たるものかああああ!!!」


 ピザフライはアキラの拳を回避!

 避けざまにアメリカンパンチをミゾオチに叩き込む!

 血反吐をまき散らしながら弾き飛ばされるアキラ!

 バウンドしながら大地を転がるアキラを追うピザフライ!

 弾き飛ばされた神風アキラは崖際で停止!

 もはや逃げ場なし!

 追い詰められた神風アキラへ――ピザフライがフトコロからショットガンを取り出し、発砲!


 バゴン! バゴン! バゴン!


 悪魔的スラッグ弾の連射!

 神風アキラの肉体が吹き飛んでいく!

 穴だらけのレンコンと化し、おびただしい血液が大地に染み込む!


「ピザフライ……許さぬ……!

 必ず……必ずや貴様を……!」

「まだしゃべれるとはタマゲますデス!

 夫婦仲良く……あの世へレッツゴー!!」


 バゴン!!!


 無慈悲なるショットガン発砲!

 血と肉片を撒き散らしながらさらに弾き飛ばされる神風アキラ!


「殺す……! 殺おおおおおおおおおす!!!」


 悪魔的叫びを発しながら――神風アキラは崖から落下!

 100メートル以上の高さ!

 波にもまれ海の中へ消えていく……!


……

 地球真拳継承者神風アキラ、討ち取ったり!

 HAHAHAHAHA!!」


 ショットガンを投げ捨て、代わりにアメリカ国旗をその手に握る!


「HAHAHAHAHA! U・S・A! U・S・A!」


 アメリカ国旗を振りながらU・S・Aコールを叫ぶピザフライ!

 拍手で讃えるバッファローヘッド。

 その他遠巻きに決闘を見守っていた部下一同。

 そこへ現れたのは――!


「遅かったか……!」


 神宮寺じんぐうじゴウショウ!

 神風アキラを追ったサクラを――さらに追ってきたのだ!

 血まみれのサクラを抱きかかえ、地球真拳・地球ダッシュを発動!

 その場から退避する!

 追わんとするバッファローヘッドであったが――


「捨て置けい! 最新の猛毒、どの道すぐに地獄行きよ!

 それよりも次の地球ファイターを始末するぞ!」

「……承知でゴンス!」


 ピザフライ一同は次の獲物を狩りにその場を去る。

 アメリカ語の高笑いを響かせながら――。


「HAHAHAHAHA! HAHAHAHAHA!!」

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