2 謎のメガネ女子高生!月宮殿ウメコ!

 それぞれの国、県、職業などが書かれたプラカードを掲げながら――

 グラウンドを行進する地球ファイター達。


「いよッ! 兄上! 日本一!」


 会場に響く美少女JKの声!

 兄を応援するため駆け付けた神風かみかぜルリである!

 故障した郵便バイクを親切なエンジニアに直してもらい、時速400キロでこの会場に辿り着いたのだ。

 爽やかなセーラーJK服が眩しくきらめく!

 若さこそパワー! おお、肌のキメが違う! やっぱり女は十代!

 係員に案内された地球ファイター関係者席に座っての応援である!

 隣には地球真拳師範代、神宮寺じんぐうじゴウショウ!

 露店で買った焼きそばを食べながらの観戦!

 彼もまたCIA四天王の襲撃を退け、超高速移動忍法により開会式に間に合ったのだ!


「先生! 強そうな連中ばかりですね!」

「いかにも!

 地球ファイトとは地球の支配権をかけて行われる武闘大会!

 具体的には!

 地球連合国の長! 地球大統領を選出するための戦い!

 最強のファイターが集うのは道理中の道理よ!」


 ――地球連合国。

 地球圏における国家間の平和維持、国際協力を目的として設立された超国家的国際機関。

 かつて存在した国際連合の発展組織である。

 地球を一つの国家に見立てたその政治形態はいわゆる大統領制。

 かつては国際選挙により選出されていた地球大統領であるが――

 時は戦国! 弱肉強食! 乱世の時代!

 いつしか力によって大統領を決めることとなったのだ!

 戦いの末見事地球一となったファイターは地球大統領決定権を持ち――

 自分が大統領となるもよし!

 自国の元首、親兄弟、会社の先輩など他の者を指名するもよし!

 それが! 地球規模の武闘大会! 地球ファイトなのだ!

 全世界が見守る中、地球最強のファイターが地球の元首を決める!

 これほど納得できる選出方法が他にあろうか! いや、ない!


「今回は特に強豪揃い……!

 いくら地球真拳継承者とはいえ……神風トオルでも生き残ることは至難ね」


 行進するトオルを見ながら……ルリの隣に腰掛ける女が一人!

 ルリと同じJKセーラー服に身を包んだポニーテール・クールメガネ美女だ!

 品のある仕草ですらりと伸びる脚を組む!


「え!? 何!? なになに!? どちらさま!?」


 当然のように隣に座るメガネJKをいぶかしがる神風ルリ!

 咄嗟にポケットの手裏剣に手を伸ばす!


「あら……忘れちゃったの? 私学校を休みがちだったから……無理もないわね……しくしく」

「やだ!? ウソ!? 泣くの!? ごめん! なんだかわかんないけどゴメン!」


 ウソ泣きを始めるメガネ女子高生!

 見事演技にひっかかるルリ!


「泣かないで! 思い出したよ! よく覚えてないけど!」

「しくしく……ほんと? よかった、私たち友達だものね」

「それはわかんないけど多分そう! えーっとたしか名前は……」

「私の名前は……そうね、月宮殿げっきゅうでんウメコとでもしておくわ」

「ウメコちゃんね! 記憶にないけどよろしくね!」

「ええ、よろしく……!」


 上品な笑みをうかべるウメコに握手を求めるルリ!

 JK同士のピチピチな肌が触れ合う!

 ――その時である!


「ンアあああああああああ――――ッ!!??」


 神風ルリに悪魔的電流走る!

 白目をむいて悪霊にとりつかれたがごとく痙攣!


「ひっ!? ちょっと何事!?」

「なんだろう……ウメコちゃんの手……!

 なんだか……!」

「ギクリ!」

「ずっとずっと前に触れたような……!

 その顔も…………!

 そう、まるで……!」

「ギクリ! ドキドキ!!」


 ウメコの顔をじっと見つめる神風ルリ!

 その顔を舐めまわすように……否、実際に舐め始める!


 れろおおおおお!!! れるれるれる!!!


「キャッ! アンッ! ンアアッ! ちょ、な、何するの!?」

「この味……」


 ルリの記憶が――懐かしさの答えを導き出す。


「……母上?」



 ◆◆◆



 シン・巣鴨コロシアム最上階に設置されたVIPルーム。

 アメリカンソファーに腰を沈めながら男がハンバーガーをかじる。

 その前でドゲザスタイルをとるアイアンブルーのフライトスーツ男。


「この度は……大変申し訳ございませぬ……!」


 アメリカン絨毯じゅうたんに額をこすりつけているのはCIA四天王、天空のケーンだ。


「……ファックス」

「……え?」

「……ファックス」

「……はい?」

「……ファックス」

「……」


「ファアアアアアアアアアックス!!!」


 突如烈火のごとく怒りだし、食べかけのハンバーガーを投げつける――

 カウボーイハットにパツキンケツアゴの男!

 そう! アメリカ大統領、ミスター・ピザフライである!


「ファックス! ファックス! このファックス野郎!!

 地球代表を仕留めそこなうとは!

 なんてファックス野郎だファックス!!!」

「アイムソーリー! 予期せぬ邪魔が入りまして!!

 我らに歯向かう例の忍者、ヤエベニが現れましたれば!」

「やかましい! たかが忍者一人に翻弄されおって!!」


 ベシン! ベシン!


 ピザフライ怒りの連続ハンバーガー投擲!

 フライトスーツがケチャップまみれと化していく!

 神風トオルを始末するべく、CIAエージェントを引き連れ神宮寺道場を襲撃した天空のケーン。

 しかし、装甲くノ一ヤエベニと神宮寺ゴウショウを前に撤退を余儀なくされたのだ。


「ファックス! ファックス! ファッキンファックス!!」

「プレジデント……そろそろお時間ですわん」


 セクシーボイスで時間を告げるアメリカン美女。

 パツキン・デカパイ・カウガールである!

 その名の通りパツキンでデカパイでカウガールの格好だ。

 特にそのデカパイは悪魔的!

 耐性のない者がその巨大なオッパイを目にしようものなら……突発性鼻血出血死間違いなし!


「ああ、今行く……! 天空のケーン!

 ちゃんと掃除しとけよ! ハンバーガーは補充しておけ! 領収書は認めん!」

「イエッサー!!!」


 不機嫌にVIPルームを後にするピザフライ。

 デカパイを揺らしながらその後ろに付いていくパツキン・デカパイ・カウガール。

 そしてもう一人――。


「地球代表神風トオルの始末……やはりお前に任せるべきだったな」

「……」


 テンガロンハットに黒のダスター・コート。

 ゴーグルと赤いスカーフで顔を隠したガンマン風の男。

 ピザフライの右腕、処刑人ハリー・ガンウッドである!


「忌々しき地球真拳! 我が計画を唯一邪魔し得る目障りな拳法!

 奴がどこまで勝ち進むかわからんが……その時は頼むぞ」

「……あいよ」


 悪魔的オーラを発しながら――三人はコロシアム中央開会式会場へと向かう!



 ◆◆◆



「……母上?」


 見知らぬメガネJKの顔を舐めまわした神風ルリ。

 その味は――己の母親を連想させた。


「ギクリ! や、ヤダわルリさん! そんなわけないでしょう!?」


 ずり落ちたメガネを直すクールJKウメコ!

 そのウメコをじーっと見つめるルリ!


「じょ、常識的に考えてごらんなさい! この張りのあるお肌!

 どう見てもピチピチギャルのそれ!

 とても子供を二人も産んだ人妻には見えないでしょう!?」

「たしかに……言われてみればそうね……」

「それに……あなたのお母様は病気で亡くなったはずでしょう?

 あなたがまだ一歳、トオルは五歳の時だったわね」

「そう……だから私母上の記憶が少ししかなくって……。

 あれ? ずいぶんうちの家族構成に詳しいね、そなた」

「ギクリ! やだ、私たちが出会ってすぐに教えてくれたじゃないの」

「そうだっけな……」


 疑惑を深める神風ルリ!

 そのつぶらな瞳は今や遮光器土偶のごとし!


「そうだ! ルリさん、ちょっとこれを見て!」


 ウメコがセーラーJK服の胸元に手を突っ込み何かを取り出す!

 それは糸で吊った卍手裏剣!

 ルリの目の前でゆっくりと振り子的に揺らす!


「ッ!? 催眠術!?」

「ほら……この手裏剣をよく見るのよ……」

「なめられたものね……! !?」

「私はあなたの友達……私はあなたの友達……」

「アナタはワタシのトモダチ……アナタはワタシのトモダチ……」


 神風ルリは催眠術にかかってしまった!


「ウメコチャン、ワタシタチ、シンユウ!」

「ええ、改めてよろしくね」

「ヨロシク! ヨロシク! キャッキャッ!!」


 にこやかに微笑むJKたち!


「ゴウショウさん、あなたも」

「ウム……!」


 食べ終えた焼きそばのパックを片付けながら神宮寺ゴウショウが応える。


「この子たちを守るのは……一人でも多い方がいい」

「そうね」

「……始まるぞ」


 行進を終えた地球ファイターがコロシアム中央に整列!

 地球ファイト決勝大会主催者あいさつが始まる!

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