トレジャーハント Ⅵ
そういえば、切羽詰まったときの
そして、そんな益体もないことに考えを巡らせるくらいには、精神が回復していた、のかも知れない。
適当に電車を乗り降りする。女性専用車両、そうでない車両、立つ、座る……たっぷり40分、そうして路線内を移動する……尾行者は、たぶんいない。
メッセージアプリで、適当な駅を指定して宮藤さんに送信。そこで彼女と落ち合った。
彼女の顔を見た瞬間、自分でもびっくりするほどに大きな安堵の溜め息が出た。
「宮藤さん……!」
「大峰さん。良かった…ねぇ、さっきも言ったけど
「たぶん……今のところは。それで宮藤さん、どこか落ち着けるところに移動しませんか? ここで話すわけにも」
「そうね……とりあえずそういうところを探しましょ」
一旦別れて改札を出る。よく会社の飲み会で利用するチェーンの居酒屋があった。そこを指定して、落ち合う。
「はぁ」
宮藤さんは席に着くと、草臥れた様子で上着を脱いだ。
「とりあえず……お疲れ様です?」
「フフ……お互いにね。まさかこうなるとは。荒事には慣れているつもりだったんだけど」
「荒事」
「別に流血騒ぎを起こそうってんじゃないのよ、単に無茶をやるってだけ……大峰さん、今更かも知れないけど謝っておくわ。巻き込んでしまってごめんなさい」
宮藤さんが頭を下げる。とんでもないです、乗ったのは私なのに……私も謝りつつ、本題を切り出す。
「宮藤さん。この横領事件って具体的には…何があったんですか。その、お金の動きとか」
「……私にもわからない。詳しいことは何もね……横領があったことすら、知ったのはつい最近なのよ? 大峰さんが今言った通り、金の動きがおかしいことに気づいた上司が、各
「それで、私は結果をまとめて宮藤さんに渡した」
「データ化されたものと照らし合わせて、私はお金の流れを探ったわ。巧妙に隠されていて、正直全く糸口が掴めなかった。幾重にもセーフティがかかっている感じ……領収書の金額と会社の出納を見比べると明らかに食い違っているのに、どこで浮いたかが全く見えてこないの」
「当時の経理担当の人とかは?」
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