ナイトハンターズ
「揃ったな?」
夜半。目を凝らして見なければ分からない漆黒の中、真緒は冷静に現場に到着した人員を把握していた。彼女は義賊団『ナイトハンターズ』を束ねるリーダーであり、また自身も凄腕の大泥棒である。こういうケースだと大抵、警察と権力者の双方から追われるものだが、真緒は根回しに手を抜かない。今夜、国家権力はナイトハンターズに手出しできないであろう。
「見取り図は青写真の通り、各員頭に叩き込んだことと思う。もし忘れていた場合は、今すぐ手近な者に訊いておけ」
影は動かなかった。
「よろしい。では状況開始。つつがなく、な」
互いの昼の顔すら知らないナイトハンターズが、ほうぼうに散っていく。
「――さて」
真緒はフェイスベールを着け直し、ターゲットたる屋敷の出窓を見上げた。
するり、ロープで最上階へと潜入する。メンバーに配った青写真は一部、脚色が含まれている……あれの通りに行動すると、辿り着けない部屋があるのだ。
部屋の広さはざっと10畳。中心には天蓋付きのベッド。その上に、剥き出しの白い背中をこちらに見せた女の姿があった。
「
真緒がその背中に呼びかける。背中の主……架音は、ひどくゆっくりとした動きで真緒を振り返った。
「……真緒! 来てくれたのね」
「うん。屋敷には既に、私の仲間たちが何人も」
「……じゃあ、たぶんあっという間だよね」
架音の表情に陰が落ちる。この屋敷は、
「……後悔してる?」
「まさか。ただ……恩がないってわけじゃないから、ね」
架音は寂しそうに笑った。
「だとしても――許せるわけがない。貴女にあんなことを言ったおじ様を」
「真緒」
震える声で言う真緒を、架音が優しく抱きしめる。そして、そのまま口づけを交わし……二人、ベッドに倒れ込んだ。
「いいの? リーダーがこんなところで」
「事前調査は私がやったし」
「わたしが屋敷の内部構造と、警備員の巡回時間を手引きしたからじゃない……」
架音はくすくすと笑う。そのまま、真緒の服を脱がしにかかるが……それは駄目だと止められる。
「一応、仕事中だから」
「……わかった。待ってる」
真緒は部屋を出て行った。ロケットを握り締め、架音は祈る……どうか、どうか全てはつつがなく、真緒とわたしと、「ナイトハンターズ」の未来に幸福の光がありますように、と。
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