ナイトハンターズ

 さか真緒まおよわい19、広範な知識を有し運動能力に優れ、裏の顔はあくどい権力者から美術品や金品を盗み出すである。


「揃ったな?」

 夜半。目を凝らして見なければ分からない漆黒の中、真緒は冷静に現場に到着した人員を把握していた。彼女は義賊団『ナイトハンターズ』を束ねるリーダーであり、また自身も凄腕の大泥棒である。こういうケースだと大抵、警察と権力者の双方から追われるものだが、真緒は根回しに手を抜かない。今夜、国家権力はナイトハンターズに手出しできないであろう。

「見取り図は青写真の通り、各員頭に叩き込んだことと思う。もし忘れていた場合は、今すぐ手近な者に訊いておけ」

 影は動かなかった。

「よろしい。では状況開始。、な」

 互いの昼の顔すら知らないナイトハンターズが、ほうぼうに散っていく。

「――さて」

 真緒はフェイスベールを着け直し、ターゲットたる屋敷の出窓を見上げた。


 するり、ロープで最上階へと潜入する。メンバーに配った青写真は一部、脚色が含まれている……あれの通りに行動すると、辿があるのだ。

 部屋の広さはざっと10畳。中心には天蓋付きのベッド。その上に、剥き出しの白い背中をこちらに見せた女の姿があった。

架音カノン

 真緒がその背中に呼びかける。背中の主……架音は、ひどくゆっくりとした動きで真緒を振り返った。

「……真緒! 来てくれたのね」

「うん。屋敷には既に、私の仲間たちが何人も」

「……じゃあ、たぶんだよね」

 架音の表情に陰が落ちる。この屋敷は、

「……後悔してる?」

「まさか。ただ……恩がないってわけじゃないから、ね」

 架音は寂しそうに笑った。

「だとしても――許せるわけがない。貴女にあんなことを言ったおじ様を」

「真緒」

 震える声で言う真緒を、架音が優しく抱きしめる。そして、そのまま口づけを交わし……二人、ベッドに倒れ込んだ。

「いいの? リーダーがこんなところで」

「事前調査は私がやったし」

「わたしが屋敷の内部構造と、警備員の巡回時間を手引きしたからじゃない……」

 架音はくすくすと笑う。そのまま、真緒の服を脱がしにかかるが……それは駄目だと止められる。

「一応、仕事中だから」

「……わかった。待ってる」

 真緒は部屋を出て行った。ロケットを握り締め、架音は祈る……どうか、どうか全ては、真緒とわたしと、「ナイトハンターズ」の未来に幸福の光がありますように、と。

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