勤め人と酒と同僚のバラード
議事録作りとやらは面倒だが、こいつがないと会議で出たどんな発言も存在しないのとおんなじことになってしまい、それではあまりにも徒労なので、
「ええっと……平成…間違えた令、和…と……」
和暦そのものはなんとも思わないが、システム周りに響いてくるというのが困る。事前に告知していてほしい。というより、和暦を意地でも使わせる弊社に問題があるのではないか?
考え始めると止まらないので、ひとまず無視してキーを打ち込んでいく。ブラインドタッチを大学生のうちに習得しておこうと思って結局出来なかった。出来る人を探して押し付ければいいだけの話なのだが、それでも同僚のタイピングは千鶴の速度には劣っていた。
「アイツらホントに社会人なのかよ……」
自分のことは棚に上げてぼやきつつ、スーパーで買った安い缶チューハイを呷る。値段相応の不味さだった。
「……うぇ」
前日の午後から6時間半かけて行われた会議。実のある成果が得られたとは到底思えないのだが、やれと言われたからにはどんな出来栄えになったとしてもやり遂げるしかあるまい。
一人暮らしの四畳半に、キーを叩く音だけが断続的に響き続けていた。
「……はい、
「おおっ! サンキュー!」
おおっじゃねえんだよ自分でやれ、と言いかけたのを内心で押し殺し、千鶴は同僚の岡部
「ねぇねぇ川崎さん」
そんな千鶴に、背後から声をかける者があった。
「今ヒマ? もしよかったらうちの課の案件手伝ってほしいんだけど……タイプ速かったよね?」
「……
「ね、眠そうだったから…」
杜松
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