海辺の劣情
水しぶきが上がる。
海水浴場の飛び込み台は賑わっていた。
そんな中でも
私はパラソルの下で温くなったメロンソーダを啜りながらその光景を見ていた。恋人がああして衆目を浴びるのは、気分が良いようでもあり悪いようでもある。
「お待たせ!」
ひと通り海を楽しんだらしい彼女は、よく鍛えられた脚に汗と海水の珠を浮かべながらこちらへ駆け寄ってきた。顔はふにゃふにゃと笑っている。ギャラリーにもてはやされて気分がいいのだろうか。
私は良くない。
「美味しそーなの飲んでるじゃない。一口ちょーだい」
拒否する間もなく、里美が私のメロンソーダに吸い付いた。少し髪をかき上げ、きれいな赤い唇を窄めて、グリーンの液体を吸い上げていく。長い睫毛が瞬かれる度に、私の心臓も跳ねるみたいだった。
「ふー。ご馳走さま」
里美はいたずらっぽく笑い、また海へと飛び出していった。
人の気も知らないで。
「だから……何が悪かったのか言ってくれれば」
「自分で考えなさい」
「弱ったなぁ……」
また海から上がってきた里美を岩陰に連れ込み、水着の紐を解く。はちきれんばかりの胸が露わになる。よく日焼けした肌と、その下の白が残った部分とのコントラストが美しい。里美は抵抗しなかった。それがまた気に入らない。
「妬いてる?」
「別に」
しょうがないなぁ、とか言いながら、私を抱こうとした腕を振り払い、半ば噛み付くように唇を奪う。わざと音を立てて吸う。そのまま首、鎖骨、胸、臍……と、口の位置を下げていく。
「あのぅ……」
里美が声をかけてくる。谷間越しに、困ったような笑顔がこちらを見つめていた。
「そこから先もおやりになるつもりで…?」
「……」
答えず、水着の紐を口に咥えた。塩っぱい。さっきまで海の中にいたのだから当たり前だ。
今度は私という海に溺れさせてやる。
ぐい、と引っ張る。頼りない布は簡単に落ちた。さすがに恥ずかしかったのか、里美の脚が固まった。
「やっ…」
か細い、甘い、上辺だけの、本心は別のところにある拒否の声。火がついた。
私もパーカーを脱いだ。本当にここでするの? という里美の震えた声に、何か不都合でもあるの、とぶっきらぼうに返す。
「ないけど」
口にいくと見せかけて、耳を食んで、またキスを頭から腰へと下ろしていった。
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