◆235◆ネックウォーマーのヒミツ

 「……頭いた……」


 うん? 頭が痛い? あぁ、ロドリゴさんが起きたんだ……。

 起きた!

 僕はガバッと体を起こす。もう朝だ。

 昨日は結局、ロドリゴさんがイラーノのベットに寝て、イラーノはロドリゴさんの部屋で寝る事になった。

 僕は、二段ベットの上から下を覗き込む。


 「おはようございます。ロドリゴさん、大丈夫ですか?」


 ロドリゴさんは、上半身を起こしてベットに座っていた。僕が声を掛けると、ビクッとした後、上を見上げ驚いている。


 「おはよう。居たのか……。昨日はすまなかった」


 「覚えているんだ」


 「まあ……な。昨日の事は聞き流してくれ」


 バツが悪そうにロドリゴさんは言った。


 「僕、父さんがあんな風に思っているなんて知らなかった。だから僕が冒険者になるのを喜んでいるのって、リゼタぐらいだと思っていたよ。聞けてよかった」


 「そうか……。イラーノの事を頼むな。いや、二人共無事に戻って来るんだぞ」


 「うん」


 トントントン。


 「主様、起きましたか?」


 え? ルイユ?

 控え目に声を掛けて来たルイユは、そっとドアを開け入って来た。

 ロドリゴさんが、ベットから出てドアへ向かうと、ルイユは驚く。ロドリゴさんは、ドアを閉めるとルイユに振り返った。

 さっきまではとは違い、鋭い目つきでロドリゴさんはルイユを見る。


 「おはようございます。昨日はこちらに泊まったのですか?」


 チラッとイラーノが寝ているはずのベットを見て、ルイユはロドリゴさんに言った。


 「あぁ。そうだ。昨日は、何をしにボスの元へ行った?」


 よっぽど気にしてるんだ……。


 「剣を預かってもらいました」


 「何!?」


 「ちょっと、ルイユ!?」


 ロドリゴさんがルイユに聞いたという事は、僕達が話してないという事だとルイユも気がついているはず。なのになんで、ストレートに話すの?

 僕は、慌てて二段ベットの上から降りた。


 「ロドリゴには、話しておいた方がいいでしょう。キュイが、眷属だと知っているのですし」


 「どういうつもりだ? 何故預けた?」


 「クテュールで、チュトラリーは最後でしょう。ですので……」


 え? それも話すの?


 「最後とは?」


 「ケアリーヌ様の作り上げた仕組みに綻びが生じていて、私とチュトラリーが上手く出会わなくなっていたようです。もし万が一、アイテムを発見出来なかった場合、次のチュトラリーにゆだねても私が出会う事ができないかもしれません」


 「それで預けたというのか?」


 「私が次の主様と出会えれば、キュイの元にいけばいいいだけです。そして、私を刺してもらう」


 「え!?」


 僕が驚くと、悲し気な顔でルイユはほほ笑んだ。


 「クテュールと探して見つからなかったのならないのでしょう。本当に次の主様が最後になるでしょうから……」


 「で、大丈夫なのか、預けて……」


 「大丈夫ですよ。キュイが持っている事を知っているのは、私達だけです。それに知った所で、キュイを殺さないと手に入りません」


 「だから倒されたらどうすると言っているんだ」


 「あら、キュイは強いですよ? ボスですから。それに主様のマジックアイテムの効果でほぼ無敵でしょう」


 「え? そうなの?」


 「お前、何を作ったんだ!」


 ロドリゴさんは、驚いて僕を見た。

 何をと言われてもネックウォーマーなんだけど……。


 「マジックアイテムの効果は、疲労回復です。魔法だとリジェネと言ったところでしょうか。つまり疲れ知らず。あれをつけている限り、一定時間ごとに回復しています。また、しびれなどの麻痺無効の効果も付与されてます」


 「お、お前! ボスになんてものを装備させたんだ!」


 ロドリゴさんが、マジで怒ってる!


 「いやだって……そんなのついてるって今知ったし……ごめんなさい」


 「あのなぁ。敵味方の前に、そんなのをモンスターにしかもボスに装備させたと知られたら大変だ。外して来い!」


 「え!? でも……」


 それに剣をくくりつけてきたんだけど……。


 「それは困ります。剣は、それに隠しました。その時に主様に封印を施して頂いたので大丈夫です。隠し場所としては、これほどの場所はないと思いますが?」


 「はぁ……。わかった。装備の事は誰にも言うなよ」


 そう言うと、ロドリゴさんはそのまま部屋を出て行った。


 「おや、すぐに引き下がりましたね?」


 僕は、そうだねと頷いた。

 もしかして二日酔いなのかもしれない……。

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