◇234◇ロドリゴの心境

 僕達は、こっそりと村に戻り部屋に帰って来た。

 村に帰ると報告を入れていたからか、三か月いなかったけど部屋は綺麗に掃除されている。


 「ねえ、クテュール。俺達、国の外に行くんだよね?」


 「え? あ、うん。そうみたいだね」


 「絶対にその前に、外套作ってね!」


 真顔で言われてしまった。

 イラーノにとって、凄く大切な事らしい。


 「わかってるよ。色々ここで作ってから出発しようと思ってる」


 「色々?」


 そうだと僕は頷いた。

 トントントン。

 その時ドアがノックされ、僕達は顔を見合わせる。この時間だ。たぶんロドリゴさんだろう。


 「はい」


 イラーノがドアを開けると、やっぱりロドリゴさんだった。

 酒臭い臭いを漂わせ、ちょっとムッとした顔つきで中に入って来る。ダイドさんも一緒だ。


 「お前達、どこに行っていた? あの鳥のモンスターの所か?」


 何となく、目が座っている様な気がする……。


 「お酒くさ! そうだけど……話は明日しようよ」


 イラーノが顔をしかめて言うと、ふんとロドリゴさんがその場に座り込んだ!

 これ、かなり酔ってませんか?


 「もう、酔っ払い……」


 ため息をしつつイラーノが呟く。

 ダイドさんも困り顔で隣に立っている。


 「相談しに行ったのか?」


 「え?」


 「俺……私じゃなく、モンスターに相談しに行ったのかって聞いているんだ!」


 「もう何言ってんの?」


 「俺はそんなに頼りないか……」


 「頼りにしてるよ」


 「じゃなぜ、相談してくれない!」


 「………」


 イラーノは困り顔だ。

 たぶんロドリゴさんの本音なのかも。


 「ロドリゴ……二人が困ってる。戻るぞ」


 ダイドさんがそう声を掛けるも、ロドリゴさんは話を続ける。


 「本当は、クテュールも手元に引き取って育てたかった。ドドイが残したもう一人の子だ。だけどアンチュールさんの事もあったし、俺もギルドマスターになって忙しくなった。だが、それでも引き取るべきだった!」


 そう言ってロドリゴさんは僕を見た。


 「ドドイが言っていたんだ。自分の一言でクテュールが自信をなくしてしまったってな。だから俺に今度、稽古をつけてほしいって言われていた。その矢先だったんだ。彼が死んだのは……。俺が選択したのは、ドドイが死んだ真相を追及する事だった。託されていたのに、お前を後回しにした……」


 ロドリゴさんは、今度は俯く。

 父さんがそんな風に思っていたなんて知らなかった。じゃ僕は、冒険者になってよかったのかもしれない。


 「だから、テイマーとしてでも冒険者になるって来てくれた時は嬉しかった。傍に居れば、稽古は出来るそう思っていた。けどあいつらは、クテュールに目を付けた。それにより君は、ドドイの死に不信感を持ってしまった。結果的に守るどころか、危険な目に遭わせてしまった。そして、運命を背負わせられた……」


 「ロドリゴさん……」


 そっか。責任を感じてたんだ。


 「僕は、ロドリゴさんに感謝してます。テイマーって、現れたら知らせなくちゃいけなかったんだよね? アベガルさんから聞きました。もしばれたら作戦がうまく行ったのに、ギルドマスターでいられなくなるよね。アベガルさんが協力してくれたけど、ロドリゴさんがそうしていなければ出来なかったことだから。ありがとうございます」


 僕は、座り込んでいるロドリゴさんにお礼を言った。

 ロドリゴさんが、ほほ笑んだ!

 初めて見たんじゃないか? うん?

 ロドリゴさんが、崩れる様に横になった。


 「え? ちょっとここで寝ないでよ!」


 「びっくりした。寝ただけか……」


 僕は安堵する。


 「全く。アベガルさんに対抗して飲むから。あの人、ザルだな。ロドリゴも強いんだが……。さて、どうするか」


 ダイドさんが、はぁっとため息をついて言った。


 「もう言いたい事だけ言って寝ちゃうんだから! 俺のベット使っていいよ。俺、お父さんの部屋で寝るから」


 「そうか。悪いな」


 ダイドさんは、ロドリゴさんを担ぎ、イラーノのベットに寝かせた。


 「……もしかして、お父さんじゃなくてアベガルさんに剣術ならった事にいじけていた?」


 「不満はあったみたいだな。まああれだ。二人を取られた気分だったみたいだ」


 ダイドさんがそう答えた。

 なるほど。自分より自由に動けるアベガルさんが、僕達を奪っていった様に感じたのか。


 「もうバカだなぁ。俺の父親は、世界で一人だけなのに……」


 イラーノにとって、父親はロドリゴさんだけか。

 そうだよね。これだけ愛情を注いでくれてるのだから。

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