◇222◇アベガル戦法

 ジッとあの鋭いまなざしでアベガルさんは、僕を見つめている。

 こ、怖い……。


 「チュトラリーって、ようはテイマーみたいにモンスターを従える事ができるのだろう?」


 「えっと。僕は、そんなつもりはないけど。友達だと思っているから」


 「友達……なるほど」


 僕の言葉に、アベガルさんはチラッとルイユを見た。

 そう言えば僕、ルイユを友達だと思っているって、叫んだよね……。


 「クテュール。お前のその能力の事は、ロドリゴさんもご存知なんだろう?」


 これは、なんて答えたらいいんだろう? うんって頷いて大丈夫なのかな?


 「たぶん、テイマーだと思ったんじゃないか? だから二人で行かせた。モンスターに襲われる事もないからな。どうだ?」


 たぶんそれもあったんだと思うけど……。

 街を出る事になった本当の経緯は、話せないからなぁ。


 「だろうね。今回、街を出て思ったよ。結構親バカだったんだなぁって」


 イラーノが、ちょっと照れながら答えた。

 まあ、知らないのも不自然か。


 「テイマーだと知れると色々と面倒になるだろうからって、メインを剣士にしてくれたんだ」


 「ではやはり、サブにテイマーを登録してあるんだな?」


 僕は、頷いた。

 それを見たアベガルさんは、深いため息をつく。

 一体なんだろう? 何か凄くまずいのだろうか。


 「本来はメインだろうが、サブだろうが、テイマーが現れたら冒険者ギルド共通の情報にしなくてはいけない。けど、通達は来ていない。ロドリゴさんは、隠したままだ。これは、サブマスターもグルだろうな」


 そう言って、また僕に鋭い視線を向けて来た。

 やっぱり頷いちゃいけなかったかも。

 イラーノもやばいって顔つきになった。


 「そこでだ、そのサブのテイマーの情報を消そうかと思うのだがどうだ?」


 「なんで!?」


 意外な事を言われ驚く。

 一体、何を企んでいるんだろう?


 「間違いだったって消すんだよ。どっちにしても眷属だったモンスターを解除する事も出来るのだろう? 鑑定した時に、眷属はいなかったからな。間違って入力してしまったって事にすればいい」


 そうだった。ミサンガで、情報を工作したんだった。

 でも本当に消せるのだろうか? だったら冒険者を辞めたい時に辞められる。


 「ほ、本当に消せるの?」


 「な、何か企んでいないよね?」


 僕が消せるのか不安で聞くと、イラーノも何か企んでいないかと不安になったみたい。

 今までのアベガルさんの行動からすれば、絶対に企んでいるんだけど……。


 「あのな。俺がお前達をつけ回していたのは、エルフと何か悪さをしようとしていると思っていたからだ。それは、違うとわかった。だからその事に関しては、もう疑ってない」


 「じゃなんでそんなに協力的なの?」


 ジッとアベガルさんを見つめ、イラーノが更に聞いた。


 「クテュールは、テイマーじゃなくてチュトラリーなんだよな? まあ同じようなものだろうけど。これから行動するにあたり、テイマーだと途中でばれれば、色々とやっかいだし、ロドリゴさんもただじゃすまないだろう」


 「え……」


 アベガルさんの言葉に、イラーノは青ざめる。


 「まあ、貸しを作っておくのも悪くない。ただ、消すのは一人じゃ出来ないんだ。申請して承諾してくれる相手が必要だ。だからロドリゴさんの協力も必要なんだ。クテュールがテイマーではないと、騎士団の連中は思っているからな」


 「なるほど。そのついでに俺の性別も訂正してくれるつもりだったと」


 ボソッとコーリゼさんが呟いた。


 「では消して頂きましょう。主様は、テイマーではないのですから」


 ルイユがそう言った。


 「その前に……教えてほしい事があるんだが」


 ルイユを見つめ、アベガルさんが条件があると言い出した!

 やっぱり何か企みがあったんだ。


 「何かしら?」


 「ルイユ、君はモンスターだったな。どうやって街に入った?」


 そうだった! 僕の眷属だから入れた。でも不正をして、眷属がいない様にしたから、眷属でもないのに街へ入れちゃった事になってるんだ。

 ここで、本当は眷属だったんですって言ってもいいけど、そうしたら今度は、ロドリゴさんはどうしてテイマーとわかったんだって事になる。

 『眷属がいる者がテイマー』だから、テイマーだと知っていると言ってしまった今では、チュトラリーだから眷属の表示が見えないと嘘が言えない!

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