◆221◆変わらずこのままで
ジッと注目する中、ルイユはこくんと頷いた。
「できるの!?」
僕が驚くと、ルイユはちょっと困り顔になる。
「確実ではありません。エルフの中にケアリーヌ様みたいな考え方が出来る方が居れば、考えつく事が可能かと」
「エルフが協力してくれるのか?」
「それは主様にかかっているでしょうけどね」
アベガルさんの質問に、ルイユは僕に振り返ってそう言った。
また僕なの? ルイユは、僕に希望を持ち過ぎだと思う……。
「あの、僕に何が出来ると……」
「約束なさっていたではありませんか。エルフにチュトラリーとしての役割を果たすと」
「え! あ。そういえば!」
忘れていた。その為に僕は、イラーノ達と来たんだった。
「約束?」
アベガルさんは、僕をジトッと見た。たぶん嘘をついていたのかって事なんだろうけど。
「エルフに会った目的は、嘘じゃないからね? 俺のお父さんに会う。約束はその時に、チュトラリーとしてしたんだよ」
イラーノが僕の代わりに答えてくれた。
「で、何を約束したんだ?」
「エルフの繁栄の手助けです」
「は、繁栄だと?」
今度は、ルイユが答えた。
「エルフ達は、何をする気だ?」
「どうしてそう、すぐに疑うのです。彼らは元々女性の出生率が低いのです。チュトラリーは本来エルフが選ばれ、エルフの女性の出生率を上げる役割もあったのです」
「どうやって?」
「そこまで説明が必要ですか? 本当に1から10まで教えないといけないのですね」
はぁっと、わざとらしくルイユが言うと、アベガルさんも黙り込んだ。
「話を聞いて僕が自分で決めた事だよ。
「うーん。チュトラリーの役割って、魔女を倒す事じゃないのか?」
黙って聞いていたコーリゼさんが、ルイユに聞く。
「最終的にそうです。ですが魔女との争いで、エルフは激減したのです。これ以上魂が減らない様にする為に、繁栄は必要でした。どうやら魂は、すぐに輪廻はしないようですが、ある程度経つと行き場がなくなり消滅するようだと、ケアリーヌ様は言っていました」
「よし、わかった。魔女の件は、話した所で信じてもらうのは難しいだろう。だから俺が、張り込む事にする。どうだ?」
「別に私はかまいませんが?」
突然のアベガルさんの提案に、ルイユが承諾すると僕も含め皆が頷いた。って、今までと変わらないって事だよね?
「で、コーリゼお前、女なんだろう?」
「……す、すみません。冒険者になってエルフを探したかったんです」
そうだ。ミューラちゃんが、最後にお姉ちゃんと呼んでいた。だから魔女も男装したコーリゼさんを探していた。
「はぁ。俺達も探し出せないはずだ。男として登録していたんだからな」
「「え!」」
僕とイラーノが驚いて声を上げた。そうだったのか。
「10年前。俺はちょうど15歳だった。冒険者に憧れてもいたんだ。だけど、女だから諦めていた。そこに剣が転がりこんで……。ミューラを助ける為、俺は村を出たんだ」
冒険者を一々鑑定しないからわからないままだったんだ。
「どうする? 性別を変更するか?」
「このままでいいのなら男性のままでいたい。その方が過ごしやすい。それに、男として生きていたから言葉遣いが……」
10年か。本当は女性なのに、大変だっただろうなぁ。
「俺の方はかまわないが、その……結婚とか考えているなら」
「そんな相手もいないし、嫁に行く気もない。出来れば、彼らの手助けをしたい」
コーリゼさんは、僕達を見た。
「本当にいいのか? 今なら可能なんだが……」
「可能とは? 不正をしたのに許してやるって事か?」
「事情が事情だ。こっそり直す。ただし、タイミング的に今しかできない」
アベガルさんが、驚く事を言い出した。
余りにも素直に行動されると、裏があるんじゃないかと勘ぐってしまうんだけど。
「ありがとうございます。俺は、冒険者を普通にやっていきたいので、男のままでお願いします」
「そうか。ならいい。女性として冒険者をするのは、大変だからな。では次は、クテュールだな」
え……僕!?
まだ疑いが晴れてないらしい。一体何を聞きたいんだろう?
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