◆209◆狙われていたのは
僕がドアを開けると、光が差し込んで来る。でも森の中なので強烈な光ではない。目の前には、人間になったルイユがいた。
「ルイユ!」
僕は、ルイユに抱き着いた。
「これこそ、アベガルさんに見られたら恋人だって思われてもしょうがないよねぇ~」
からかう様にイラーノが言う。
そうだった! アベガルさんが見張っているかもしれないんだった。
僕は、ルイユから離れ周りを見渡す。
「アベガルならモンスターと戦闘中です。それと、あの剣士も少し先で、モンスターと戦闘中です。どうやらモンスターはここではなく、剣士のコーリゼの元へ向かっている様です」
「え! なんで? 狙われているのってコーリゼさん?」
「……かもしれない。今しか聞けないって言っていたけど、俺達が危ないんじゃなくて、自分が危ないかもと思ったからかも」
何故あの人、エルフに狙われているの? エルフの事を探っているから?
「ルイユ! 助けに行くよ」
「またですか? それで死ぬ目にあったのに」
「そうだね。僕が強ければルイユにお願いする事もないんだけど……」
「ルイユ。俺がその間守っているから」
はぁっとルイユは溜息をつく。
「仕方がありません。それが主様の願いなら。行きますよ」
ルイユは、僕達を脇に抱えコーリゼさんの元へ向かう。
少し浮いて移動は、走るより早い。木々をどけながら向かうけどひやひやだ。
「彼です」
コーリゼさんとモンスター三体が戦っている。
「イラーノ、主様を頼みましたよ」
「うん」
イラーノは、驚く事に剣を抜いた。
本気で僕を守るつもりらしい。
一応僕も剣を手に持つ。
「助太刀します」
「はぁはぁ。あなたはもしかして……」
って、コーリゼさんは、怪我をしているようでフラフラだ。
「ヒール」
ルイユが、コーリゼさんに治癒を施す。彼は驚いていた。
戦闘能力も自分より上で、ヒールまで出来るんだから驚くよね。
あっという間に、三体のモンスターをルイユが倒した。
「まずいですね。モンスターに囲まれました」
囲まれた!?
周りを見れば、数体モンスターが見える。
「えぇ!? 守るって言ったけど、俺、大丈夫かな……」
「すみませんが、しばらくは一人でお願いします」
「え?」
ルイユの言葉にコーリゼさんは、驚いて返す。
ルイユは、僕達の方に向かってきた。
「ちょ、何戻って来ているの!」
「向こうの方が強いですから」
僕がそう言うと、平然とルイユはそう返して来た。
ほとんどのモンスターは、僕達を無視しコーリゼさんに向かう。
僕達に向かってきたモンスターをルイユは倒す。
「たぶん大丈夫だと思いますが、主様を頼みましたよ」
ルイユは頷くイラーノを確認して、モンスターに追われているコーリゼさんに向かった。
コーリゼさんは、始めは何とか戦っていたけど、五体、六体と集まれば一人では無理だ。逃げまわっているけど、囲まれてしまっていた。
そこへ、ルイユが突っ込む。
そして、周りのモンスターに向けて風の刃を放った!
「あんた一体何者だ!」
「イラーノ! 後ろ!」
コーリゼさんが叫ぶと同時にルイユも叫んだ。
イラーノがハッとして、剣で熊の様なモンスターの攻撃を受け止めるも受け止めきれず。胸を裂かれ吹っ飛んだ!
「うわぁ」
「イラーノ!」
僕達は、二回光に包まれた。
一回目は、イラーノがモンスターの爪でひっかれた時、二回目はイラーノが木に激突した時。
オートヒールが発動したんだ。
「はぁはぁ、ヒール」
驚く事にイラーノは、自分にヒールを掛け僕に襲い掛かろうとしていたモンスターに斬りかかった!
たぶん殆どダメージは与えていないだろう。
モンスターが、攻撃対象をイラーノに変えて襲い掛かろうとした時、助けに来たルイユにモンスターはとどめを刺された。
「あ、ありがとう」
イラーノは、安堵したようにルイユにお礼を言った。
「やはり剣の稽古は、した方がいいようですね」
「ルイユ!」
僕は叫ぶ。
またモンスターが現れ、僕達を見ていたコーリゼさんに襲い掛かった。
複数の攻撃を受けたコーリゼさんは、一体のモンスターの攻撃を交わすが、背中を攻撃され吹っ飛んだ!
「本当に、次々と!」
ルイユはそう言いつつ、コーリゼさんの元へ行きモンスターを倒していく。
「イラーノ行こう」
「え?」
「コーリゼさんにヒールをお願い!」
「わかった」
別々にいるよりいいだろう。
ルイユは、僕を危険にさらしたくないから遠くに居ろって言うけど、これじゃコーリゼさんがもたない。
「ヒール」
イラーノが、気を失ったコーリゼさんにヒールを施す。
ルイユは僕達をチラッと見るも、何も言わずモンスターを倒していく。
それにしても凄い数だ。
もしコーリゼさんを殺す為に集めたとしたら、コーリゼさんは一体エルフに何をしたんだろう。
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