◆201◆暴かれる作戦

 馬車が発進した。

 ルイユはもしかしたらマドラーユさんではないと証明する為に、姿を現したのかもしれない。

 自分だけが悪者になる為に、イラーノを利用した。

 今回も微妙だ。マドラーユさんが薬を持っていなければ、もしかしたらイラーノは死んでいたかもしれない。

 たぶん、イラーノ程じゃなくても、僕の傷をある程度治せれば運べる。そうすれば、街に着いてからちゃんと治療を受ける事ができる。

 うん。僕を助ける作戦だな。

 助かったけど、やっぱりルイユが立てる作戦は、怖すぎる!


 「で、何を聞きだした?」


 「別に何も。彼、すっかり落ち込んじゃって。一生懸命にイラーノくんが慰めていたところよ」


 僕を見てマドラーユさんが言うと、アベガルさんも僕を見た。


 「これでわかっただろう? ルイユは、君達の味方じゃない」


 「………」


 アベガルさんがそう言うも僕は下を向き何も言わない。

 ここでは、内緒話も気を付けないと、マドラーユさんにわかってしまう。

 イラーノとは、打ち合わせしてないから何も話さない方がいい。イラーノもそう言っていたし。


 「お前達に聞きたい事がある。これは、本当にクテュールが作った物か?」


 チラッと見れば、僕が外したミサンガだ。


 「違います。それは、ルイユがくれたモノです」


 少し驚いてイラーノを見ると、僕の反応を伺う様に前に座る二人が僕を見ている。

 話さなくても行動も気を付けないといけないかもしれない。


 「ルイユにもミサンガをクテュールは作ったんです。お返しにそれをくれた。僕にもくれました。これです」


 そう言うと、白と茶色のミサンガを外した。それは、アイスインのミサンガだ。


 「これが、魔法の正体です」


 「魔法……。剣を凍らせるやつか?」


 イラーノは、そうだと頷く。


 「で、こっちはどんな効果があるんだ? 外させようとしていたな」


 「魔法を無効化する効果があります」


 「そういう事か!」


 やっと感知玉が効かなかった理由がわかったみたい。

 つじつまを合わせる為とは言え、ばらして大丈夫だろうか。


 「まさか俺のヒールまで効かないなんて思わなくて。ミサンガは、装備している人じゃないと外せないんです」


 「なるほどな。だから本人に外させようとしたのか」


 どこから見ていたかわからないけど、少なくともミサンガを外させようとした所からは見ていた。

 それを知っていて、ルイユはイラーノを襲ったのだろう。

 僕達があるいはマドラーユさんが、ルイユがと言ったところで納得しない。本人に見せるのが一番だ。


 「うーん。錬金術みたいな事ができるのは確かみたいね。それとも何か魔法の様なものがあるのかしら?」


 二人が持つミサンガを見て、マドラーユさんは言う。


 「イラーノ。それを預かっても宜しいか?」


 「どうぞ」


 「え! 渡すの?」


 僕が驚くと、イラーノはそうだと頷く。

 大丈夫なんだろうか?


 「ねえ、あのリスだけど、首輪みたいのもこんな感じだったわよね? あの子、ルイユが連れて来たんじゃないの?」


 やばい。そうだった。作り方は一緒なんだから見た目は一緒だ。


 「マドラーユさんは鋭いな。そうだよ。ルイユと連絡を取るに使っていたルイユのペットなんだ」


 なんでそんなスラスラと思いつくんだ……。

 まさかと思うけど、僕が気を失っている間に、ルイユと打ち合わせしてないよね?

 で、襲う事だけイラーノに言っていなかったとか。あり得るかもしれない。


 「クテュール、どうなんだ?」


 ジッと僕を見つめ、確認をアベガルさんはして来た。

 そうだと答えるのも変だよね。


 「し、知らない!」


 そう答えて、そっぽを向いた。


 「まあそうだとしたらあの時、森へ放した意味がわかったわ」


 「放した?」


 マドラーユさんの言葉に、アベガルさんが聞いた。

 ちょっと待って! あの作戦を話す気じゃないよね?


 「二人で出掛けてその後、私が出掛けた事になっているけど、あれ最後に出たのはクテュールよ」


 「まさか!」


 あぁ……言っちゃった。

 どう誤魔化せばいいんだ。見張りだってバカじゃない。僕達が入れ替わっていたらわかる。

 そうなれば、マジックアイテムの存在を疑う。


 「クテュール本当か?」


 本当かと問われても。うんと答えていいものか……。


 「本当だよ。逆だったんだよ。マントを置きに行ったんじゃなくて、変装道具を取りに行ったんだ。俺達も見張られている事はわかっていたから、ばれないように持ち帰って来た」


 驚く事をイラーノは言う。

 これならルイユが渡して来た物ってなるけど。

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