◆181◆嘘に真実を混ぜて

 僕達は、会合を終え冒険者ギルドに向かう。『話があるから部屋によれ』と、ロドリゴさんに凄まれた。

 あぁ……なんて言い訳しよう。


 『主様』


 うん? 小声が聞こえよく見ると、ルイユが足元にいた。

 僕は、抱き上げる。

 ルイユは、連れて行けないので冒険者ギルドを出た時に外に放した。森へ行く予定だったはずだけど行かなかったんだ。


 『何かありました?』


 たぶん浮かない顔をしているんだろうな、僕。


 「別に。ルイユは森に行かなかったの?」


 ロドリゴさん達に聞こえない様に、小声で聞いた。


 『私も見張られていたわ。だからジッとご主人様を待つ、従順なペットを演じてお待ちしてました』


 「そ、そう……」


 どうやらリスに見えるルイユにも、何かしらの不信感を持っているらしい。

 ロドリゴさんの部屋に入ると、パタンと静かにロドリゴさんはドアを閉めた。けどロドリゴさんの顔は、穏やかではない!

 かなりご立腹だ。


 「お前達! 何をしたんだ? ボスを呼び寄せて何を考えている!」


 思いっきりロドリゴさんに怒鳴られた。

 呼びよせたのはルイユだけど、それは言えないしなぁ……。


 「あとルイユと言ったな。その人を探しに行くような事を言っていたが、彼はモンスターにやられたと言っていた。ルイユとは、何者だ?」


 そうだった!

 アベガルさんは、ルイユと口にしていたんだ。

 ど、どうしよう。これもう、ごまかせないかも……。


 「それは、俺も知りたいな」


 「え……」


 俺もとイラーノが言った。


 「君とルイユの関係だよ。チュトラリーって本当はなんなの?」


 「イラーノに話したのか!」


 イラーノが、チュトラリーという単語を言った為、ロドリゴさんは驚く。


 「エルフ達の会話に出て来たんだ。って、どうやらルイユにとって特別な存在みたいなんだけど……」


 「待て。全然話が見えないんだが……」


 イラーノの説明に、困惑してロドリゴさんが言う。


 《潮時ですね》


 そうルイユが言うと、僕の手から降りた。

 そして、人の姿で立った!

 手に外したチョーカーを持っている。自分で外せるなんて本当に器用。


 「もう、ルイユ!」


 「な、何……」


 驚いたロドリゴさんは、ルイユを睨みながら剣に手を掛ける。


 「クテュール? どういう事だ!」


 「お父さん、落ち着いて!」


 僕が何か言う前にイラーノがそう言うと、ロドリゴさんとダイドさんが驚いてイラーノを見た。


 「あのリスが、ルイユだとイラーノも知っていたのか?」


 ロドリゴの問いに、イラーノは知っていたと頷く。

 ロドリゴさんは、大きなため息をついた。


 「驚かせて申し訳ありません。私は、ルイユと申します」


 「人間になるモンスターがいるとはな」


 ダイドさんが、そうボソッと呟く。


 「私は代々チュトラリーの主様に仕えるモノです。それはイラーノにも話したはずですが?」


 「そうだけど……」


 「代々?」


 ロドリゴさんがジッとルイユを見つめ呟く。


 「えぇ。チュトラリーになる者が選ばれ、毎回私はお仕えしております」


 「それが今回、クテュールだというのか?」


 ルイユは、そうだと頷く。


 「エルフが、言っていた話とはなんだ?」


 今度は、ダイドさんが聞く。


 「ほとんどの場合は、エルフがチュトラリーになるのです」


 「じゃ、襲われたって、クテュールをさらう為か?」


 ロドリゴさんが聞くとルイユは頷いた。

 違うけど、ごく自然に頷いている。そうした方がいいのか?


 「彼らは繁殖力が低いのです。チュトラリーは、彼らの希望なのです。これから主様は、チュトラリーの役目を果たしに旅に出ます」


 「なるほど、やりたい事とはこの事か」


 ダイドさんは、頷き言う。


 「チュトラリーが、繁殖力を高めると?」


 「そうです」


 ルイユは頷く。

 ロドリゴさんは、何故か眉を寄せ皺を作っている。険しい顔つきだ。


 「今の話と、街の上空にあのモンスターを呼んだ事が繋がらないんだが?」


 「あれは、私が勝手にやった事」


 「言っている意味がわからない。何故あなたにそんな事ができる」


 「言い方が悪かったわね。命令ではなくお願いしたのです。主様を助ける為に協力してほしいと。あのアベガルという男は、さも何もなかった様に現れましたが、主様を牢に入れた男です」


 「牢だと? 一体どうしてそうなった?」


 ルイユの話に、ロドリゴさんは僕達に聞いた。


 「えっと……」


 イラーノもなんと言って説明していいかわからない。

 エルフに襲われた事は、嘘と言う事になったから。僕もいい案が思いつかない。


 「理由は、エルフと一緒にいたからです。父親がエルフだと伝えると、一緒に捕らえたのです。助けるためにキュイに協力を仰ぎました」


 「ほ、本当なのか?」


 ロドリゴさんは、イラーノに問う。

 間違ってはいないけど、本当の所はエルフが襲ったからなんだけどね。

 本当にルイユは、口が上手いな……。

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