◆105◆ボスのキュイ登場

 「ミーレン。攻撃は斧でな!」


 「わかってるって」


 このままだと、全員殺される!

 シュ!


 「あぁもう! お前からだ!」


 何が起きている!?


 「ジーン、動ける!?」


 『何も見えんギャウギュウ


 『ジーンはギャウ伏せして泣いているわギャウギュウギャウ


 やっぱりモンスターにも効いているんだ!

 あれ? リリンには効いていない?


 「リリンは平気なの?」


 『ギャ私は咄嗟に目を閉じてギャウギャウギャウクテュールの腕の中に隠れたからギャウギャウギャウギャウ!』


 嘘だな。大人しかったし寝ていたよね?

 まあ、それで助かったんだし、いいか。


 「リリン。今、どういう状況?」


 『寝ていた男がギャウギャウ弓を持った男をギャウギャウ追いかけ回しているわギャウギャウギャウ


 ミーレンがダイドさんを追いかけ回しているって事か?

 ダイドさんは、離れていたから薬が届かなかったんだ!

 どうしよう。ジーン達も目が見えないなら戦いようがない!

 せめて逃がそう。

 たぶん、ムダマンス達は、僕がモンスターを操って皆殺しにしたという事にするつもりだ。

 今更逃がしても彼らが居たと言えば、探されるかもだけど。

 でもこの場にいれば、必ず殺される!


 「ジーン。サトン。リリン。数日間だったけど楽しかった。ありがとう。巻き込んでごめんね。キュイにも挨拶をした……」


 「な、なんだ!!」


 うん? ムダマンスの驚いた声が聞こえた。

 バッサバッサという音も聞こえ、強風が吹く。そして、周りが暗くなった気がする。


 『クテュールギャウ大丈夫かギャウ!?』


 「え!? キュイ!?」


 上空にキュイが現れたんだ! 辺りが暗くなったのは、キュイの影。


 「まさか! この森のボスか!!」


 「何!」


 ムダマンスの言葉に、ロドリゴさんの驚く声が聞こえた。


 「ひ~~~!!! もうしません! もう、クテュールを殺そうとはしませんから!」


 情けないエジンの声が聞こえる。

 エジンは、見えているの?


 「ねえ、エジンはどういう感じ?」


 『そうねぇギャウキュイ様を見つつ両手両足でギャウギャウギャウ後ずさりしているわギャウギャウ


 あぁ。崖みたいにかな? 見れないのが残念だ。

 エジンは、怯えて目を瞑って伏せていたから薬が入らなかったみたい。


 『君を襲っているのはギャウギャウその彼かギャウ?』


 「彼?」


 どの人の事を言っている?


 『エジンって奴の事ねギャウギャウ


 リリンが教えてくれた。


 「今回は違うよ。エジンじゃない」


 「ひぃ!! もう崖から落としたりしませんから!」


 違うって言ったのに、名前が出たからかエジンはビビりまくりだ。


 「ほ、本当に、突き落としたのか!?」


 「やっぱり、全く信じてくれてなかったんだ……」


 「だって君は無傷だったじゃないか! それに這い上がったって!! あそこはどうみても這い上がれない! 君が嘘をついていると……」


 あぁ。なるほど。まあ、這い上がったのは嘘だけどね。


 「本当は、キュイに助けてもらったんだ。僕の命の恩人だよ」


 僕は、顔を上げてやっと少し見える様になった瞳でキュイを見上げた。

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