◇088◇誤魔化したら三角関係?

 ふう。大抵の依頼は終わった。

 あぁ、ずっと屈んでいたから腰が痛い!

 僕は立ち上がって手を頭上に伸ばし、うーんと背中を反らして伸びをした。


 チラッと見るとエジンが珍しく真面目に採取をしている。オダリゼさんの指導の元だけど。

 ミーレンさんとナットスさんは、二人で何やら話していた。


 (さっきクテュールと何を話していたんだ?)


 (商人のお誘いだよ。父さんの後継者の打診)


 盗み見てはいけないと思うも気になって、二人の口の動きを見てしまう。


 (……昨日の事は言ってない。ロドリゴさんに言ってないんだろう?)


 (あぁ……)


 ミーレンさんの言葉に僕は驚いた!

 どういう事? 昨日の事って?

 僕に言われたら困る事って何?

 ロドリゴさんに言ってない事って何?

 二人は、何を隠しているの?


 「クテュール! ほら終わった……」


 エジンが採取が終わって僕に声を掛けて来た。

 僕は、ビクッと反応してしまう。ビックリした!

 心臓に悪い……。


 「ナットスさんがどうかしたのか?」


 僕が見ていたナットスさん達に振り向いてエジンが言う。

 エジンにバレるとは思わないけど、誤魔化さないと!


 「別に」


 「睨んでなかったか?」


 「睨むならエジンにだろう?」


 「はぁ? 手伝ってやったのに何言ってんだよ!」


 僕は、ふんとそっぽを向いた。


 「また、喧嘩しているのかお前達は……」


 ナットスさん達が、そう言って近づいて来る。

 見ていたのは誤魔化せたみたいだ。


 「もう、手伝わないからな!」


 「足手まといだから必要ない!」


 「なんだと!!」


 「随分と仲が悪いんだな。一緒に連れて来たからいいのかと思っていた」


 僕達の言い合いを見て、ミーレンさんが呟く。


 「どうやら三角関係らしい」


 ボソッと、ナットスさんがミーレンさんに耳打ちする。

 それわかっているならエジンを誘うなよ!

 いや、三角関係ではないけど! 僕が巻き込まれているだけだけどさ!

 エジンを見れば、僕を睨み付けている!


 「僕は、別にリゼタの事を何とも思ってないから!」


 そう言ったのに、何故か更にムッとした顔になった。

 ポンッとナットスさんに肩を叩かれ振り向くと、ニヤッとしている。


 「それは、わかってるから」


 わかってるって!? じゃ、リゼタが僕を好きな様に見えているって事?

 それって、エジンもそう思っているって事なのか?

 リゼタがお節介だからこうなるんだぁ!!


 「若いっていいなぁ」


 ミーレンさんが、またポツリと言った。


 「ミーレンさん達も十分若いだろう」


 オダリゼさんが、ミーレンさんの呟きにそう返す。


 「いやいや、俺はもう熱くなれないから」


 「だな」


 ミーレンさんの言葉に、ナットスさんも頷いて同意した。

 熱くなってるのはエジンだけ!!

 僕を巻き込まないでほしい。って、エジンを煽らないで!

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