◆061◆チュトラリー

 ロドリゴさんが呟いた、チュトラリーって何だろう?

 ジーンの血が消えた事と何か関係があるの?


 「君が使った回復魔法は、厳密に言うと我々が言う回復魔法とは違う。テイマーが使う魔法だ。モンスターにしか効かない魔法」


 ロドリゴさんの言葉に驚いて、僕は顔を上げ彼を見上げた。ロドリゴさんは、厳しい顔つきになっている。


 「大抵のテイマーは、モンスターを無理やり従わせている。つまり、テイマーのスキルで枷をかけているのだ。だから他のテイマーは、モンスターに愛情や友情などという感情はない」


 見上げた僕に、そうロドリゴさんは言った。

 そういうのがテイマーなら、エジンがとった態度もわかる気もするけど、僕とは全然違う。

 僕は、本当にテイマーなんだろうか?


 「でも僕は、ジーンを友達だと思っているし、無理やり従わせいるつもりはないけど……」


 『お前はギャウギャウ友だギャウギャウ


 僕の言葉に、ジーンも嬉しい言葉を返してくれた。


 「うん。ありがとう」


 「ずっと、変だとは思っていた。私が見た事があるテイマーとは、だいぶ違っていた。ただ一つだけ、当てはまるモノがあった。チュトラリーだ」


 「チュトラリー? さっきも言っていたけど何?」


 僕は、ロドリゴさんに聞いた。


 「テイマーだが、枷をかけて従わせるのではなく、彼らを守る者として存在する。モンスターを守護する者として、いわば崇拝されるテイマーだ!」


 「え?! 崇拝!」


 僕が驚いていると、ロドリゴさんとダイドさんは頷いた。

 そういうテイマーも存在するらしい。


 「人間なのに、モンスターに崇められる存在? そんな危険な……」


 話を一緒に聞いていたジェスロさんがボソッと呟き、ハッとして言葉を切った。

 そっか。テイマー自体、危険人物扱いなのに、モンスターに崇められる存在だと、人間から見れば生かしておけない存在なのでは……。


 「大丈夫だ。私が何とかする!」


 僕は何も言っていないが、思っていた事が筒抜けだった。顔に出ていたんだと思う。

 何とかするって、どうする気?

 というか、僕を助けるつもりなの? 何で?


 「しかし、よりにもよってチュトラリーとはな」


 ため息交じりに、ダイドさんが言った。


 「ぼ、僕を殺さないの?」


 「殺してほしいのか?」


 ロドリゴさんの質問に僕は、思いっきり首を横に振った。


 「殺すに決まってるだろう……」


 突然弱弱しい声が聞こえ見れば、倒れたままこっちを見ていた赤茶髪の男だった!


 「俺の……仲間だったテ……イマーを……殺した……のは、こい……つらだぞ!」


 背中が痛むのか、絞り出すように恐ろしい言葉を叫んだ!

 テイマーを殺したってどういう事!?

 ロドリゴさんとダイドさんは、男を睨み付けていた!

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