◆055◆手作りネックウォーマー

 僕は軍手をはめて、ナイフでトゲムシもどきを適当な長さに切り大きな毛糸に見立てて編み始める。


 なんだろう? こんなに大きくてトゲがあってぼこぼこしているのに、スムーズに編める! これが裁縫の加護の能力?

 これなら出来る! あぁ、楽しい!!

 そうだ。時間がある時に、皆にも作ろう! こういう草とかで作れば知らんぷり出来る。どうせまじまじと見る事が出来ないんだし。

 布で作ったら人が作ったってばれちゃうからこっちの方がいい!


 凄く時間がかかりそうだったけど、裁縫の加護のお蔭か一時間程で出来上がった。

 うーん。重いけど大丈夫かな?

 見事にごっそりと、地面にあったトゲムシもどきがなくなっていた……。

 我ながらよく作ったもんだ。


 「できたよ。頭をくぐらせて着るから」


 『あぁ』


 僕がそう言うと、キュイは頭を下げた。


 「よいしょっと」


 重いけど何とかキュイの頭に通すと、緑の輪はネックウォーマー、首にピタッと納まった。


 「はい。似合うよ、キュイ」


 『これがネックウォーマーか。悪くないな。ありがとう、クテュール』


 キュイは、僕にほほ笑んだ。

 何となく暗いと思い空を見上げれば、日が落ちた所だった!

 あれ? 変だ? 薄暗いけど見える……。夜目が利いている?!

 じゃなくて、戻らないと! 母さんが心配する!

 そうだ! 襲われた奴らが母さんに危害を加えていたらどうしよう!


 「ごめん。僕、戻らないと!」


 『うむ。気を付けてな。またいつでも来てくれ』


 「うん。出来るだけ会いに来るよ! ジーンお願いしていい?」


 『あぁ、送ろう』


 「ありがとう」


 僕は、ジーンにまたがり、二人に手を振った。

 ジーンが暗闇の中、森を駆け抜ける。

 

 ジーンたちも夜目って利くんだな。

 僕は、そんな事を感心しながらしがみついていた。



 ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆



 僕は、村の前まで送ってもらい手を振り村の中に入った。

 家に向かうと、家の前に数人の人だかり。

 誰だろう? まさかあの二人の仲間? って、エジンたち?


 「あ! クテュール! お前どこいってたんだよ!」


 エジンが僕を発見し、叫んだ。

 あ、そっか。遅いから探そうとかそういう事になっていたのか……。


 「ごめん。えっと……」


 「もう、心配したんだから! 森に探しに行けばこれ落ちているし!」


 リゼタは、僕が男たちに投げつけたキノコが入ったビニール袋を持っていた。

 そっか。探しに行ったんだ。


 「ごめん。変な人たちに襲われて隠れていたんだ」


 「変な人たちって?」


 そう質問してきたのは、この村の護衛をしている冒険者の一人のジェスロさんだ。きっと僕がいなくなったと、リゼタ達が相談したんだろう。

 彼も剣士だが、エジンとは雲泥の差。黄色い髪は短くがっしりとした体格しているし、金属の胸当てにグローブも装備。


 「二人組の冒険者……」


 僕は、三人にそう答えた。

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