◇054◇お礼にどうですか?
父さんから託されたものなどない。貰った物ならあるけど……。古びたリュック。普通のナイフ。
それ以外は、特段ないよな。どちらかを探している?
ナイフは、落としちゃったからなぁ……。くそっ! エジンのせいだからな!
「わからないけど、父さんから貰ったもので彼らにとって欲しい物があったみたい。でも聞くだけなら襲わないだろうから、奪うつもりだったのかもね」
『心当たりはあるのか?』
「心当たりと言うか、リュックとナイフしかないから。でもナイフは、あの崖で落としちゃったから……」
キュイにそう答えると、うむっと頷いた。
『だったらナイフは、探させよう』
「え? 本当?」
助けてもらってばかりで悪いな。何か恩返し出来ればいいんだけど……。
そうだ。何か装備品を作ろう!
僕は、裁縫の加護を持っているみたいだからリリンに作ったのもミサンガになったんだろうし。
でも、キュイってでかいんだよなぁ……。布代バカにならないよな。
「お礼に今度、装備品を作るね!」
『装備品? それはどういうものだ?』
「え? あ、そっか。知らないのか。防具だけどキュイ達には必要ないか……」
『そ、そんな事はない。人間が着ている服にも興味はある!』
僕がしょげて言ってしまったからそう返ってきてしまった!
いや服を着たいと言われても、さすがに無理そう。
小物にしてもらおう!
「そうだね。でも羽もあるし服はちょっと着るの大変じゃない? 小物なんてどう? えっと、部分的に着ける服なんだけど……」
『おう! それがいい!』
『もしかして、あの草で作ったあれかしら? 体によさそうね』
僕が、リリンの言葉に頷いていると、驚く事をキュイは言う。
『草で作るのか! だったらあのトゲの蔦でお願いしたい。かゆい時にこすりつけるのだが、たいてい地面なのでな』
え!? 草で作るの? いや、それなら布代浮くけど、それはそれで大変な作業……って、トゲの蔦?! 地面?
「それってもしかして、トゲムシもどきの事?」
『トゲムシ? あぁ、そう言えば見えなくもないな。たぶんそれだろう。そこに生えている』
そこにって……。キュイの目線を追ってその場所に行ってみると、トゲムシもどきがびっしりだった!
ここには、これを食べにあの小動物はこないみたいだな。
よし! どうせなら作ってみよう!
「じゃ、ちょっと作ってみるよ。えっとネックウォーマーでいいかな? 首につけるんだけど」
『よくわからんが、それでよい』
キュイが嬉しそうに答えた。
足にでもいいけど、引っ掛けそうだしちょっと大きくつくらなきゃいけないけど、丸く円に作るだけだから簡単だ!
って、これも裁縫になるんだな。
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