◇052◇母の為に
「ただいま! 母さん!」
僕は、玄関の扉を開け母さんの部屋へ急いだ。
トントントン。
「入るよ」
部屋の扉をノックし開けた。
ベットに横になった母さんが起き上がる。
「クテュール。帰ってきてくれたんだね」
「うん……。大丈夫?」
僕が聞くと母さんは頷いた。
「リゼタとエジンが夕飯の買い出しに行ってるから今日はゆっくり休んで」
「そう。二人も一緒だったのね。あのね、見かけない冒険者があなたを探しているみたいなの」
「僕を?」
母さんは頷く。
「冒険者になって街に行ったって話したんだけど、会えたかしら? 父さんの知り合いみたいなの」
僕は、首を横に振った。
いつの事だろう? 昨日の? それとも今日?
「それっていつ?」
「今朝よ」
「だったらすれ違いになったのかもね。街に戻れば会えるじゃないかな?」
「やっぱり戻るのね……」
そう言うと母さんは俯いた。
お金を貯める為に冒険者ギルドに泊まってるけど、家から通ってもよさげな気がする。
☆二つの採取なら一人でも出来るし、馬車代を差し引いてもお金は貯まる。リゼタ達に分け前を取られるよりずっといい。
そうしたら、一人で毎日森に行けるからキュイ達にも会える。
うん。そうしよう!
これで、母さんも体調が戻るだろうし!
「僕、ここから仕事に通うよ。それならいい? 薬草を摘む仕事もあってそれなら安全だから」
それを聞いた母さんは、パッと笑顔になった。
「そうね。それなら安心ね」
僕も母さんの笑顔を見て、安心したのだった。
◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆ ◆ ◇ ◇ ◇ ◆
暫くして、リゼタ達が食材を買って訪ねて来た。
「買って来たわよ! 今日はシチューを作ってあげるわ!」
「シチューか。あ、そうだ!」
眠りのキノコが森に生えているのを採ってこよう!
母さんは、眠りが浅いと話していた。これを刻んで入れれば朝までぐっすりだ!
「僕、ちょっとキノコ採って来る」
「は? キノコ? って、おい!」
エジンが驚いて追いかけてこようとする。
「あのさ。二人で料理作っていたら? 僕が戻って来るのはわかってるだろう?」
そうエジンに言うと、少し考えてから頷いた。
やっぱりリゼタを使うのが、エジンには有効だな。
村から出て10分程でレッドアイの森に到着。
「さてと、キノコは向こうだったな」
僕は、もう少し森の奥へと進んで行く。
「あった!」
焦げ茶色のキノコだ。大きさは親指ぐらいと小さい。それをプチプチと10個程採り、ビニール袋に入れた。
そして、僕は立ち上がった。
「うわぁ!」
その途端、声がして驚いて振り向けば男が二人、凄く近くに立っていた! その男たちの左手には、冒険者の証のブレスレットがついている。
『
僕の横に来たジーンが言った。気を付けろってどういう事?!
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