◆023◆真っ黒な僕

 エジンは、ギュッとこぶしを握り俯いた。


 「ち、違います。ほ、捕獲しようと……」


 「何故捕獲しようとした? 他の者の眷属になっているモンスターは、従えないのは知っているだろう?」


 エジンは、知らなかったと言いたかったのか、バッと顔を上げるもロドリゴさんは、ジロッと睨み付ける。


 「君ならヴァンサギが、そんな所にいない事ぐらい知っていただろう? それとも本当は、森の奥にでも行ったか?」


 「すみません……」


 謝ってエジンはまた俯いた。

 観念した! そう思ったけど、驚く事を言い出す!


 「クテュールの事を調べよとしたんです。彼は、冒険者になる気はなかったんです! なのでヴァンサギがいる森の奥地に行けるわけがない。だから何か、からくりがあるんじゃないかと思って、眷属のヴァンサギが捕まえようとしたんです」


 「怪我までさせておいて、何を言ってるんだ! 捕まえるじゃなくて襲ったんだろう!」


 「クテュール。今は、エジンに聞いている」


 ロドリゴさんに、そう言われ僕は口を閉じた。

 悔しいけど、エジンが言っている通り、僕一人じゃ森へ行けない。それは、ロドリゴさんもわかっているはずだ。

 なにせ馬にさえ、乗れないのだから。

 もしかしてロドリゴさん達もそう思って、森を見に行っていたのか?

 冒険者でもなかった僕が、森の奥地に行く訳ないと思って。


 「では、ヴァンサギが傷を負ったのは、防衛の為だな?」


 「はい。そうです。捕まえようとしたら反撃されました」


 悔しい! 絶対嘘なのに!

 っていうか、このままだと僕の身が危ないんじゃ……。


 「クテュール……」


 「はい……」


 「そのモンスター達とはどこで出会ったのだ? 正直に言いなさい。そうすれば、キラーウルフに命じてエジンを襲わせた事は目を瞑る」


 そんな取引ってあるか!?

 僕を最初から真っ黒だと思っていたんじゃないか!

 そうだ! 今だ! 今言えば信じて貰える!


 「わかりました。だったらお話しします。僕がテイマーかもとわかったのは、エジンのお蔭です!」


 そう言うと、エジンはギョッとして僕を見た。


 「エジンが昨日、稽古をすると言って森へ僕を連れ出したんです! そこで彼に崖から突き落とされた! その時に友達に助けてもらったんです!」


 「本当か?」


 「ま、まさか! 作り話です!」


 「リゼタに聞けばわかります! 僕に稽古をつけると言って、わざわざ昨日村を訪れた事を知ってます!」


 「だからリゼタを巻き込むなよ!」


 「やめなさい!」


 また言い争いになりそうになった、僕達をロドリゴさんは止めた。

 そして、僕に鋭い視線を送る。どうやら僕の方を疑っているらしい。


 「崖から落ちたんだな?」


 「はい……」


 「ほう。どう見ても彼らでは助けられないと思うが? 落ちる前なら可能だろうが」


 「………」


 流石にキュイの事は言ったらまずいだろうな。ボスなんだし、眷属にしたって言ったって信じてもらいない可能性が高い。

 それに、何かを探っている感がある。何かを聞き出そうとしている!?

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