◆011◆ギルドマスターのロドリゴ

 ジッともう一人の門番が、僕を見張っている。

 思いっきり怪しい人物としての扱いだ。

 どうせなら、ジーンを連れてくればよかったかも。

 そうしたら見ただけで、モンスターだと疑いようがない。

 けど、モンスターだと襲われても困るか……。


 「お待たせした。テイマーかもしれないという子はどの子だね?」


 「こちらの子です」


 灰色の髪のちょっと小太りのおじさんが、門番に僕だと言われジッと僕を上から下まで見る。そして、リリンをジッと凝視した。


 「うむ。確かに、ヴァンサギっぽいな」


 「ヴァンサギ?」


 「お前、テイマーだと言いながらそいつが何だか知らないでいるのかよ」


 おじさんが言った言葉に首を傾げると、バカにしたようにエジンが言った。

 リリンと言う名前しか聞いてないし、そもそも冒険者になるつもりもなかったからモンスターに興味すらなかったんだから仕方がないじゃないか!


 「ヴァンザギとは、森の奥地にいる魔力を吸い取る能力持つ兎に似たモンスターだ。君が抱いているそれとそっくりのモンスター」


 ムッとしている僕に、小太りのおじさんの後ろから現れた、がっしりとした体格のこれまたおじさんが言った。

 ちょっと偉そうなので、ギルドの幹部かもしれない。

 あぁやばいよ!

 バレたら確実に罰せられる!


 冒険者じゃないものが、それを装おうと罰を受ける。勿論、冒険者でも魔法使いでもないのに、魔法使いだと偽っても同じだ。

 今回、装ってはいない。けど、リリンまで連れてテイマーに目覚めたと偽ろうとしたのは本当だ! いや、テイマーかもしれないけど。


 テイマーだと思った経緯を話せば信じてくれるだろうか?

 エジンに殺されかけたって……。モンスターと話せるって。


 「あの……」


 「おっと失礼。私はギルドマスターのロドリゴだ。で、君の名前は?」


 ギロリと髪と同じ深緑の瞳で僕をジッと捕らえ聞いた。

 ギルドマスターって、ギルドで一番偉いんじゃないの?

 なんでそんな人まで、出張ってくるのさ!

 僕は、嫌な汗が出て来るのを感じた。


 「……クテュールです」


 聞こえるか聞こえないかの声で答えた。しかも震えていた!

 我ながら情けない。


 「謝るなら今の内だぜ」


 エジンがそう言った。

 たぶん、目の前の全員がそう思っているに違いない。

 なんて浅はかだったんだろう。

 話せるだけじゃテイマーだと信じてもらえないと思って、リリンを連れて来た。

 でも、本物のモンスターを連れて行っても、何かスキル的なものがないといけないかもしれないのに……。


 今更ながらそれに気が付いた。

 きっとギルドマスターと一緒に来たのは、鑑定師というジョブの人だ!

 鑑定師は、人のステータスを見れるという。勿論、物やモンスターも鑑定出来るらしい。

 テイマーって表示されていなければ、リリンがいても意味がない!

 どうしたらいいんだろう。

 今逃げ出しても、捕まる可能性100%!

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