第85話:学びたいこと
「異世界から来られた救世主様に対し、礼儀やマナーがなどと言う者などおりませんよ?」
愛那がナチェルに訳を話してお願いしたところ、彼女からそんな答えが返ってきた。
「いえ! それでも最低限でいいのでライツ様のご家族に失礼のないようにしたいんです! お願いします、ナチェルさん!」
愛那が指を組んで必死な眼差しでそう頼み込むと、ナチェルは「わかりました」と頷いた。
「お任せ下さい。私がマナ様に完璧な淑女の振る舞いをお教えいたします」
「あ・・・・・・完璧じゃなくてもいいですよ? 最低限で」
やる気はあるが、完璧という言葉につい怯んでしまう愛那だった。
そんなこんなであっという間に次の日が来て、現在愛那は馬車の中にいた。
「マナ様、今からそのように身を固くしていては、お体に障ります」
「はっ、つい。そうですね、気をつけます」
同じ馬車にはナチェルの姿。
ルザハーツ領までは二時間程かかるらしい。
その道中の時間を使ってナチェルに学びたいことがあると言えば、ライツは快く受け入れてくれた。
「マナ様は物覚えがよろしいのですから、緊張しなければ大丈夫ですよ」
「あはは」
物覚えがいいというのは昨日からナチェルに言われていることだ。
お辞儀の仕方から始まり、何故かダンスの稽古も受けることになった。
ダンスはこれから先、必ず必要になるものだと言われれば、覚えないわけにはいかない。
しかも「ダンスを覚えてライツ様をびっくりさせませんか?」と言われれば、気合いが入るというものだ。
愛那は高校では創作ダンス部所属。
踊りの種類は違っても、動き良し。振りを覚えることにも長けていた。
ナチェルが男役となり二人で踊り続けた昨日。
愛那がナチェルに少しドキッとしてしまっていたというのは内緒の話だ。
(浮気じゃないもん。だってナチェルさん、宝塚の男役の人みたいに凜々しくて素敵なんだもの・・・・・・)
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