第40話:女騎士



 ライツが人に知られたくないと言っていた愛那の透過魔法。

 なのに何故その魔法を知る者を一人増やしたいというのか。

 それはもちろん、愛那の着替えに女性の協力者が必要だからだ。

(こればかりは俺が手伝うわけにいかないからな)

 今も隣に座る愛那があの服を着ていると思うと、ライツは落ち着かない気分になる。 

「もう一人って、どんな方なんですか?」

 愛那の問いにライツが答える。

「ナチェル・ミューラという子爵家の令嬢で、俺とモランとは歳が同じで学友だった」

「学友の、子爵家の令嬢・・・・・・」

「ああ。今はルザハーツ家に使えていて、うちの騎士の一人だ」

「女騎士ですか!?」

 テンションが高くなった愛那の声。

 それにライツが笑う。

「マナは女騎士に興味が?」

「だって、かっこいいじゃないですか!」

 顔は見えないが、笑顔でそう言っているだろうことがわかる。

「女騎士というだけで、かっこいいなんて言葉をマナに言ってもらえるとは、羨ましいな」

「え?」

 握られた手に力が込められ、そんなことを言われた愛那がうろたえる。

 それを見ていたハリアスが驚いた表情をしている。

「あああ、あの! 女騎士だけじゃなくて、ハリアスさんやモランさんの騎士姿も素敵です!」

 うろたえたまま口に出した素直な愛那の言葉は、ライツの笑顔を固まらせた。

「・・・・・・着替えるんじゃなかったか」

 ボソリとした呟き。

「え?」

「いや。そのナチェルだが、彼女とモランは婚約者同士だ。ちなみにそこのハリアスも既婚者だ。覚えておいて欲しい」

 ライツの笑顔が微妙に恐い。

 愛那は「はい」と答えたあと「はい?」と首を傾げた。



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