第30話:お城には戻りません!



(温かい・・・・・・)

 繋いだ手の温もりが、一人じゃないと感じさせてくれている。

 愛那はどこかホッとしている自分に気づいて、ハッとして首を振った。

(いけない! まだ信用できる人かわからないのに! 第一、神様が決めた保護者って・・・・・・)

「いやです」

「え?」

「私は、お城には戻りません!」

 これだけは絶対に譲れない思いで言い切った。

(神様が決めたことでも、あの王子が私の運命の恋人だなんて、絶対に受け入れない!)

「あの王子と、二度と会いたくありません!」

「・・・・・・そう」

 愛那がうつむく。

 隣に座るライツという青年は、きっと王様の命令で救世主である私を探しに来たんだろう。

(いくらあなたが格好よくても、その声でも、騙されたりしないんだから~!)

 そんなことを思っていたから、しばらくして「わかった」という言葉に「え?」と首を傾げ、愛那はライツの顔を見た。

「マナがそう望むのなら、そうしよう」

「・・・・・・いいんですか?」

「うん。というか、最初に君には謝っておかなくてはいけないと思っていたんだ」

「あやまる?」

「マナを召喚した王と王太子、特にレディルの奴が君に対し、とても失礼な暴言を吐いたと聞いてね」

「・・・・・・」

「レディルは俺のいとこなんだ。子供の頃から近い存在でね。身内として謝罪させて欲しい。本当に申し訳なかった」

 ライツの真摯な顔に、彼を疑う気持ちが小さくなる。

「あなたが謝る必要は・・・・・・ないと思います」

「ありがとう。・・・・・・けど、もちろんあいつのことは、許さなくていいからね」

 ライツが見えない愛那に向かってニコリと笑う。

 それを見た愛那は、顔を赤くして再びうつむいた。 



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