第23話:運命の恋人とすれ違いました
「ここ、ですか?」
「冒険者ギルド?」
ハリアスとモランにライツは「そのようだ」と答えた。
【索敵】の地図のハートマークが冒険者ギルドの建物の中で点滅している。
(ここに異世界から召喚された少女、俺の【運命の恋人】がいる)
冒険者ギルドの看板を見上げライツは思い返す。
【鑑定】が使えると知った子供の頃から、ライツはずっと探し続けてきた。
人物を【鑑定】すると、最後の神託の所に一言、必ず書かれてあったのだ。
神託:【この者はあなたの運命の恋人ではありません】
運命の恋人ではないということは、運命の恋人がどこかにいる、ということだ。
ライツは最初、自分と将来結婚してもおかしくない家柄の令嬢と逢う機会があれば、魔力の残量が許す限り【鑑定】をして運命の恋人を探した。
しかし、いつまでたっても見つからない。
なので捜索範囲を広げた。
身分問わず探してみた。
それでも見つからない。
年齢の幅を広げてみても、見つからない。
この【鑑定】でライツがずっと恐れていたのは、性別年齢に構わず鑑定の相手が人間であれば、必ず最後に【この者はあなたの運命の恋人ではありません】と書かれてあることだった。
己の結婚相手として想像もつかないような、同性であったり、親世代祖父母世代の者であったり、性格がどうにも好ましく思えない者だったり、犯罪者であったり、運命の恋人を探す以外の目的で様々な相手を【鑑定】してきた時に、最後の一文を読む恐怖。
おそるおそるライツはそれを確認し、何度も安堵し続けてきた・・・・・・。
「神様、俺の運命の相手が誰なのか教えて下さい」
いいかげん降参する思いでそう願ってみても、神託には【いつか出会えます】と書かれるのみ。
ようやく知ることの出来た今日(異世界にいるならいると教えてくれても・・・・・・)と、思いもしたが、神様相手にそんな恨み言を言ってもしょうがない。
(長かった・・・・・・。ようやく会うことが出来る。探し続けてきた俺の運命に)
ライツは入り交じる緊張と高揚を落ち着かせ、冒険者ギルドの中へと足を進めた。
【索敵】の地図を確認する。
二階にいる。
階段へと進むライツと後ろに続く二人。
三人の引き締めた表情が崩れたのは階段を半分上った辺りだった。
ドダダダダダダ!
と、何かがすれ違った。
何の姿も見えなかったが、明らかに何かが三人の横をすれ違ったのだ。
「は?」
「何だ今のは?」
ハリアスとモランが声を上げる。
ライツは慌てて振り返った。
何も見えない。
が、【索敵】のハートマークは急激にここから移動していた。
(一瞬だけ、俺の手の届く位置に、俺の運命の恋人がいた)
まったく姿は見えなかったけれど・・・・・・。
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