第28話 狼、温泉宿をつくる(22)


「なんだと……またか、狼め」


 バトゥ都督補は、要望書を読んでる途中で小さく吐き捨てた。カラヤンは執務デスクの前で正立したまま上官の決済を待つ。

 やがて読み終わると、バトゥ都督補は温くなった紅茶を大きくあおった。


「ゼレズニー大尉。貴官もこれを読んだのかね」

「はっ。下読みとして拝読いたしました」

「この、ヴィサリオ・ウラ辺境伯の犯行、どう思った?」


「狼の記述の通り、会計帳簿からホリア・シマとの癒着を見抜いたマクガイア家政長の口を塞ぐ目的だったのではないかと」


「うむ。だが、いかな大貴族であろうと、内定とは言え、我々が家政長と認めた者を斬り捨てるなど言語道断だ。自分の女房でも寝取られたのでもない限りはな」


「ほう、家政長にもそんな事例が?」

「例えだ。家政長は〝龍の伴侶〟という龍公主との特別な結びつきを得る。だから生涯独身だ」


「それでは、ムトゥ家は今後どうなるのでしょうか」


「彼には養子が三人いた。誰がムトゥ家当主にするかは、喪が明けてからだ。もっとも、家政長の任が解かれたとは言え、先代が大きくした家名が重すぎて、押し付け合いになるだろうが」


「なるほど」

 先代の偉業と比べられながら政治の重圧に耐えるには、よほどの覚悟が必要だろう。

「話を戻すが、公式にカラヤン遊撃隊が出張っていけば、まず内政干渉だ」


「はい。ですが」


「うん。オラデアは今、前家政長の後ろでウラ一族の専横が明るみに出て、議会は紛糾。無統治状態の一歩手前だ。こちらの情報では今朝、ドワーフ族が旧市街とよばれる城壁内の貴族居住区へ押し入って、打ち壊しがあったようだ」


「衛兵は鎮圧しなかった?」


「いや、できなかった。ドワーフが三〇〇人。手斧を持って手当たり次第だ。衛兵側にも軽傷者が出た。それを止めたのは、同じドワーフのマシューという男だ。マクガイアの舎弟だそうだ」


「なるほど。彼のことは、私も存じております」


「うん。なまりがきつすぎて何を言っているのかほとんどわからなかったそうだが、マクガイアは死んでないから自重しろと説得したらしい。攻めるんなら空き家ではなく、敵の旗を目指して攻めるこそドワーフの戦だとな」


「ほう。あの男にしては、一軍の将にでもなったような威勢ですね」


「そんなコミカルな雰囲気でもなかろう。実際、兄と妹を負傷させられている。その立場からの説得は暴徒にもかなり効いたのかもしれない」


「確かに。ところで、龍公主様は今」


「うん。ニフリートおひい様をカプリル様につけて正解だった──と言ったら狼に嫌な顔をされるか。現在、オラデア・バロック宮殿北の林に〝レシャチカ荘〟という旧ホリア・シマの別邸がある。そこにいる彼の愛妾だったスヴェトラーナ・サラという女性が保護してくれているようだ。そのおかげで、カプリル様はドワーフの先頭を切って攻勢に出ずにすんだようだ。

 だが、この報告書から察するに、サラ夫人はウラ一族に夫を殺されて遺恨に思っているかもしれん。また、彼女の手許にいるミランシャという獣族女性を巡って、ヴィサリオ・ウラと奴隷競売を闘うか……情報量が多すぎて目眩めまいがする。カラヤン遊撃隊を出したとして、作戦はあるか」


「狼の作戦を支持したいと思います。業欲の男ひとりのために戦争をしている場合ではありませんから」


「同感だ」

「現在、こちらから〝霧〟をウラの領地に送りました」

「うん。……そうだ。ウラの手勢に、〝ウラカン〟と呼称する精鋭部隊がいたな」


「ウラカン?」


「西方世界で〝雄牛〟を意味する。昔、中央都経由で噂が流れてきた。盗賊団も彼らに見つかれば、石一つ盗めずに逃げ出すほど精強部隊なのだそうだ。ただ、この連中がウラ領にいるドワーフを鏖殺おうさつしたことでも有名だ」

「鏖殺……っ」


「うん。ウラ家は反ドワーフ強硬派の急先鋒だそうだ。一時期、ホリア・シマもそれを支持した。ウラカンはその弾圧の実働部隊として動いているはずだ。だから今回、ダイスケ・サナダに協力を仰ごうと思う」


「アウラール家を?」


「一個小隊(三〇人程度)だけ借りる手紙をこれから書く。貴官と狼の名前も添えておく。デーバの町北のアルバ・ユリアで合流し、貴官はそちらから彼らを連れてオラデアに入ってくれ。そして例によって、これはあくまで非公式だ。よろしく頼む」

「了解しました」

 カラヤンは踵を鳴らし、敬礼した。


  §  §  §


「おお、戻ったか、狼」


 夕方。

 城門から直接、マクガイア邸に滑り込む。

 バンガローの中から、最初にモモチ老人に出迎えられた。胸の白い羽毛に返り血がついて固まっていた。

 リビングの長テーブルで龍公主二人を含め、カラヤン隊の副官ロイズ中尉。銀狼団スンダーロ兄。ドワーフたちも交えて地図を囲んで会議をしていた。

 カプリルはずっと泣き続けたのか、俺を見るなり、顔を真っ赤にして抱きついてきた。その頭を撫でてやりながら、フクロウ老人に尋ねる。


「モモチさん。マクガイアさんの容態は」

「うむ。胸と背中を袈裟けさりにされた。大量出血こそしたが、幸いにも内臓まで達して折らん。意識は戻っておらぬが、死線の目前で踏みとどまったといったところかの。それよりも妹御が、右腕を斬り落とされて重傷じゃ」


「えっ!?」

 客間に向かうと、二つのベッドにマクガイアとオルテナが青白い顔で仰向けに寝かされていた。


「よ、お……おおかみ」

 オルテナが乾ききった唇でいびつに笑ってみせる。


「どじ、ふんだ……やつら、殺人マシーン、だった」

「でも、オルテナ。生きてるよ。まだ生きてる」


「は……終わり、だ」

「終わり?」


「職人として、大事な腕を……その上、また兄ちゃんにかばわれて……あたい、もう、死にたい」

「オルテナっ」


「にげろ、て……言われてたのに、斬られた兄ちゃん、守りたくて……バカだ。死んでも詫びきれねぇ」


「マクガイアさんも生きてるから、大丈夫……ですよね?」


 傍にいるフクロウ老人に振り返ると、白い鎖帷子くさりかたびらを見せてくれた。血が乾いて赤黒く染まり、斜めに大きく斬り裂かれた鎖帷子。


「マシューというドワーフに聞いたところ、家政長は上着の下にこの鎖帷子を着込んでおいたらしい。鎖帷子は元もと斬撃耐性がある。しかもこれは特殊金属の糸らしくての。そのせいで傷が致命傷にまで届かず、すんだようだ」


「っ……あたいが、つくった、帷子。着て、くれてたんだ……」


 斬り裂かれた鎖帷子へ左手と手のない右腕をさし出し、オルテナは涙を流した。

 もらい泣きしそうになるのを、俺は後ろを振り返ることで誤魔化す。


「誰でもいい。酒屋に行ってワインを買ってきてくれ。銘柄は、コンスタンティン・ラトゥーリエ1476だ」


「こんな時に、酒とな?」テンプルトンが大きな目をぱちくりさせた。

「狼。おれ、酒屋知ってる。さっき見たぞ」


 今回再登板のヴィヴァーチェが手を挙げた。その手に金袋を渡してやる。


「お母さんもお気に入りのワイン銘柄だ。間違えるなよ」

「あいよー、りょーかいっ」


 軽い返事でサルなみの身軽さでバンガローを飛び出していく。その後をヴェルデが無言でついていったので、ヨシとした。あの二人、いいコンビなのかもしれない。


「マクガイアさんに、治癒魔法をかけます」

 ベッドに横たわるマクガイアは、血の気がなく灰色の肌をしていた。虫の息で心臓が動いているのが不思議に思えた。


「 天と地をつなぎとめし、水と風よ 

  そは命を育み 流脈を通じる司なり 」


「なにっ!? 一つの詠唱スペルに二つ以上の同位精の混成じゃと?」

 テンプルトンは目を瞠った。


「 涙を流せば 血肉の敗北にあらず

  息吹をかければ 骨肉の潰滅にならず

  星の雫を掌底たなごころに宿し、その傷を癒やせ 」


 ──〝創痍星癒〟!スープラナトゥラリス


「う、うううっ……オルテナ、逃げろっ!?」


 マクガイアがむくりと上体を起こした。顔色は真っ白だが、胸と背中の傷は消えた。不思議そうに自分の手を見つめる。


「どういうこった。オレは確か、ウラカンに斬られた……っ?」

「オルテナがつくったミスリルの鎖帷子が、あなたを守ったのですよ」


 俺は酒が届くまで、ちょっと休憩したい。ベッドに手をついて部屋を出た。


「なんだ、もう話は終わったのか?」


 長テーブルに頬杖をつき、長い足を組んで、メドゥサ会頭が不敵な眼差しで俺を見つめてくる。人目が多いと女ボスのスイッチが入る〝見栄ハリーヌ〟。


「二人が愉しそうにどこか店へ駆けて行ったぞ」

「お使いを頼みました。帰ってきたら、魔法でもう一人を治療します。それまで小休止ですかね」


「おい、誰か狼に水もってきてやれ」


 甲冑姿のスンダーロが部下に命じる。するとキッチンから馬車係がリンゴと水をもってきてくれた。なんだか今回の旅のオールスターって感じだな。


 すると、客間から獅子の慟哭どうこくがドアを蹴破らんばかりに聞こえてきた。マクガイアがオルテナの腕を見たのだろう。


「あの様子では、ここにいる者たち同様、例の大貴族と一戦交えなければ気が済まぬかもな」

「ですね。どうしましょうか……。あの、誰かここまでの経緯を教えて欲しいんだけど」


 リンゴをかじりつつ俺が訊ねると、カラヤン隊副官のロイズ中尉が説明してくれる。


「ドワーフたちの話によると、一昨日の晩。ヴィサリオ・ウラ邸の周辺を〈ジェットストリート商会〉の馬車三〇余台が取り囲んだ。それで丸一日は何も起きなかったんだ」


 ところが、昨日の朝。

 マクガイア家政長がマルスコット・ウラの逮捕令状と家宅捜索令状を持って衛兵達と向かったことで、火がついた。

 ウラ側は、〝ドワーフ〟家政長の敷地内の立入りを拒否。重装騎士十五名が剣を抜いて衛兵たを追い払い始めた。これに対してドワーフたちが鉄球を持って、応戦。やがて白兵戦さながらの乱闘になった。その混乱に乗じて、裏手から逃げだそうとした四人の騎士をドワーフたちが見つけ、取り押さえられた。逮捕時の彼らは、ひどく怯えて剣すら帯びていない状態だった。


「その重装騎士達は〝ウラカン〟と呼ばれるヴィサリオ・ウラ子飼いの精鋭らしくてね。ドワーフに容赦しない連中だった。〈ジェットストリート商会〉はすぐに劣勢になって徒歩で逃げ出した。その最後尾しんがりにいたのが、オルテナという商会の会頭代行だった」


「それじゃあマクガイアさんは?」


「衛兵に守られて、その時は無事だった。でも彼女がウラカンの一人に襲われて、マクガイア家政長は護衛を振り切って彼女を助けに走ったらしい」


 俺は思わず強く目を閉じた。ロイズ中尉は続ける。


「最初は彼女に覆い被さって背中を斬られた。その後、騎士を一喝すると、別の騎士がオルテナが鉄球を構えたのを見て、腕を切断。さらに斬りにいったところを、マクガイア家政長が彼女の身代わりに斬られたようだね」


「ということは、そのウラカンはマクガイアさんを家政長と知りながら、ためらわずに斬りかかったわけですか」

「うん。どの証言からも恐怖が感じられたから、どうもそういうことらしい」


 大公よ。これで満足かよ……っ。


「それじゃあ、現在の情況は?」

「新市街全域でドワーフ住民が二〇の部隊を組織して蜂起した。総勢七五〇〇。貴族の馬車とみるや手斧で襲いかかってるらしい」


「それで、ヴィサリオ・ウラは」


「息子ともども、馬車で城門兵の制止を振り切って逃げおおせたようだ。守衛長は逮捕令状まで持っていったのに、正面突破されてメンツを潰された形だ。議会が機能していないから貴族への法的な追及もできず、ウラ家の町来訪を禁じる公示を出したに留まってるよ。事実上の打つ手なしだ。そのウラは今のところ自領で沈黙を保ってるそうだ。動きは明日以降だと思う」


「現在のヴィサリオ・ウラの邸はどうなりました?」


「家宅捜索も終わってるけど、事件を示唆しさするものは何も出なかったようだ。使用人はいない。もぬけのカラだよ。それでもオラデア衛兵が五〇人体制で防備を固めてる。あっちでドワーフが暴発しないようにね。それから、スコールとウルダが潜入でいくつか書類を拾ってきてくれた。後で見せるよ」


 モモチ塾の実技演習というわけか。そそのかしたな、あの爺っつぁま。


「カラヤンさんとラムザの第1小隊は?」

「さっき連絡が来た。デーバの北アルバ・ユリアという町でアウラール家の小隊と合流することになってる。バトゥ都督補のご判断だ」


 ダイスケ・サナダの小隊……抜刀隊じゃないだろうな。


「オラデア駐留のカラヤン隊の数は?」

「一二〇だね。軽装騎馬三〇に、軽装歩兵九〇」

「スンダーロ。銀狼団は?」

「七〇だ。だが全部、軽装騎馬をもってきたぜ」


「敵の数は?」

 ロイズ中尉が地図の東に置かれた大駒を指差して、


「暫定だが、兵七〇〇〇ほどだと思われるよ。ヴィサリオ・ウラの邸の書類から兵練報告書らしきものを見つけた。おざなりにされていたが、そこに兵数と内訳が書かれていた」


 書類を渡されて、俺は目をすがめた。


 兵七〇〇〇。重装騎兵二〇〇〇。重装歩兵三〇〇〇。予備兵が二〇〇〇だ。実働は五〇〇〇。だが、軽装の騎兵と歩兵がいないのが気にかかる。兵科に柔軟性がない。軍事パレードでもするのか。


(パレード……もしかして)


「ロイズさん。敵の兵站へいたん部隊は確認できました?」

「兵站? そういえば荷駄かだ(輸送馬車)の車両数記載を示す資料はどこにもなかったね」


 俺は周りの男たちを見回した。


「あの、ここの地元の人達に聞きたいのだけど。もうすぐ春節祭だよな。領民は今の時期、どうしてる?」


 傭兵やドワーフたちは顔を見合わせて、


「そりゃあ、祭りの準備だ。藁で冬の神を作って燃やすんだ。その火をみんなで取り囲んで踊りや歌で、冬を見送り、春を迎えるんだ。一年の豊作を祈りをこめてな」


「じゃあ、その春節祭を領主が戦争だからって中止にしたら?」

 俺の問いに、ドワーフはなんでそんなこと聞くんだという顔を横に振った。


「そりゃあ……〝冗談じゃねえ〟だな」


「ああ。祭りをおろそかにすると、その年は凶作になるって言われてる。そのタイミングで戦争なんてあり得ねえよ」


「ああ、そういうことか」

 ロイズ中尉がしくじった様子で顔を痛そうにゆがめた。

「この情報は、春節祭のパレードか」


 俺はうなずいた。


「おそらくね。だが、最低でも兵七〇〇〇を保有していることはわかった」

「ははっ。そういう慰めがプロには一番傷つくんだよなあ」


 安心しろ。慰めてないから。カラヤン隊は情報分析力が弱いのは知ってる。


「ロイズさん。こういう情報も物は考えよう。見方を変えれば、いい情報ですよ」

「へぇ、たとえば?」


「ヴィサリオ・ウラはマクガイア家政長を殺したと確信して自領に戻った。オラデアは大騒動だ。この前提を踏まえて、ヴィサリオは春節祭のパレードをするか、しないかだ」


「ん? そりゃあ……どっちだ?」

 スンダーロが首を傾げる。俺は周りを見て、言った。


「答えは、ヴィサリオ・ウラは、する。だろう」

「これだけの騒動を起こしておいてか?」


「騒動を起こしたから、やるんだ。領民や周辺の領主達に、自分がマクガイア家政長殺害に関与していないことをアピールするためにね。今年の祭りには、ドワーフを一人始末したから自分たちの生活が何か変わるのかという、罪を自己正当化し、ドワーフ迫害を助長させるメッセージもつけてくるだろう」


 スンダーロは手のひらに拳をぶつけた。


「息子は騎士長殺しで、父親が家政長殺しまでしかけといて図々しい。けど事情を知らなかったら、うっかり無関係だと信じてしまいそうだな」


「そう。ヴィサリオ・ウラは大貴族で、前家政長を抱き込めるほど発言力が強かった。この町にだってウラ一族の支持者も相当数いるだろう。ドワーフの家政長なんてまっぴらだと思ってる人がさ」


「そりゃあ、まあ。そうかもな」


「その人達が、次にヴィサリオにご注進するとすれば、ドワーフたちの一斉蜂起がいつまで続くかだ。マクガイア家政長が死んだのなら、ドワーフたちの蜂起はこれからも続くだろう。ヘタをすればウラ派の住民が私刑に遭うかもしれない」


「見損なうな。オレたちゃ、そこまでしねえよ!」

 ドワーフの抗議を俺は両手で宥めた。


「その危機感はもってるはずだよ。逆に、マクガイア家政長が生きているとわかれば、ドワーフたちの蜂起が宥められ、町が沈静化する。だから一刻も早くヴィサリオ・ウラがドワーフで混乱した町に戻ってきて、連中から自分たちを守って欲しい。そう思ってるかもしれない。ウラ一族にとってどっちが利益になるだろうな」


「オレが死んでた方が、いいに決まってる」


 マクガイアが客間から出てきた。青白い顔だったが、服も着て足取りもしっかりしていた。


「少なくともホリア・シマとの癒着がうやむやになり、議会に戻りやすくなる。うまく周りを丸め込めれば、自分が次の家政長になれる目もある。ヤツはそう考えるだろうよ」


 俺はうなずいた。


「それじゃあ、もうしばらく死んでてもらえますか?」


「そいつは、無理な相談だな、狼」グラサンの奥で憎怒ぞうぬの鬼火が灯っていた。「オルテナの腕を、一流の職人の腕を切り落としやがったんだ。ヤツの首であがなってもらわねぇと、オレのはらの虫が治まらねえんだよ」


「彼女の腕は、俺がなんとかします」

「はあぁ!? なに言ってんだ、お前はっ!」唾が飛んできそうなくらい怒鳴られた。


「もうすぐ、その燃料が運ばれてくるので。──ところで、ロイズさん。うちの子らはどうしてます?」


「今朝、スコールとウルダが志願してウラ領に飛んでくれてるよ。夕方には戻ると言っていたから、そろそろじゃないかな」


「たっだいま~っと」


 ヴィヴァーチェがワインボトルの鶴首を掴んで戻ってきた。

 どうやら、俺はスコールとウルダの報告は直接聞けないらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る