恋愛って何なのかよく分からない

「恋愛って何なのかよく分からない」


パパにそんなことを訊いたことがある。するとパパは、


「さあ? お父さんにもよく分からない。お父さんも自分のしてるのが<恋愛>かどうかなんて考えてなかったし」


って言ってきた。それから、


「お父さんはね、何となく良いなって思った人には、逆にいいカッコしないようにしてきたんだ。だって美智果も知ってる通り、お父さんはカッコいい男の人じゃない。だらしなくてダメダメなポンコツだ。そんなお父さんが女の人の前でカッコつけて様になると思う? 少なくともお父さんはそう思わなかった。


だからね、お父さんはいいカッコはしないようにしてきたんだ。自分が思ってることはなるべく正直に口にして、その上で引いたり気落ち悪がったりしない女性と付き合ってきた。それで最後に出会ったのがママだよ」


って。


でもそこまで聞いた時、私は、


「え~? でも何かそれヤだな~。手当たり次第って感じしてチャラいんですけど~?」


って言っちゃった。だけどパパは笑って、


「手当たり次第って言うか、猫被ってちゃ自分がどんな人間か相手に分かってもらえないし、猫被ってる自分を好きになってくれる人なんて、ホントの自分を好きになってくれる人じゃないよ。そういうのは、結局、自分が素の部分を見せないと分からないんだよ」


だって。


う~、やっぱり分からない。


「お母さんもお父さんも、殆ど最初っから猫被ったりしなかった。お互いにいいカッコとかしなくても、『自分はこの人のことが好き』って思えた。だから結婚までできたし、結婚してからも全然変わらなかった。がっかりすることなんてなかった。


結婚して急に変わったなんて、単にメッキが剥がれただけだよ。最初からメッキや付け焼刃で取り繕ってない者同士で気が合えば、がっかりなんてしないと思うよ」


とか言われても、ますます、


「…分かんない」


って感じだった。


だけど、<恋愛>ってことじゃなくて、家族になるっていう意味だったら、何となく分かるかな~って気もするかな。


だってさ、私、ダメダメのだらしない中年のおじさんなだけのパパのことが好きだもん。ママもそんなパパのことが好きだったっていうのはホントだと思う。


マッパでゲームしながらバリッ!っておならをブッパして「痛っっ!!」とか声を上げちゃうようなママのことが好きだったパパだからママもパパのことを好きになったんだっていうのは分かる気がする。


家の中でまでちゃんとしてろなんて言う人は友達になれない。友達にもなれない人と一緒に暮らすとか家族になるとかなんてムリ。


だって家って、自分が一番安心できてリラックスできる場所なんでしょ? だから家に帰れるんでしょ?


そういうことだったらさ、恋愛もそういうことなのかもね~、とは、思ったりするかな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る