いがみ合って生きる必要もないと思ってるんだ
そういうこともあったけど、パパは今ではお祖母ちゃんと仲良くするようにしてるんだって。イヤなことがあっても、今でも完全には許してなくても、お祖母ちゃんも意地悪しようと思ってしてた訳じゃないからって。
パパはこんなことも言ってた。
「イヤな目に遭わされた相手のことを必ず許すべきだってお父さんは思わない。少なくてもお父さんはそんなことできない。自分を苦しめたりイヤな目に遭わせたことを忘れて全部を許すなんてことはできない。
自分ができないから美智果にもそうしろとは言えない。
でもね、たとえ許せなくても、認められなくても、それでも自分も相手も生きていかなきゃいけないんだ。だったら、たとえ許さなくてもそれだけに囚われてちゃ自分が苦しくなるだけだよ。
何もかも許せる相手しか生きてちゃいけないって言うんだったら、自分のやったことが誰かを苦しめて傷付けたら、苦しめて傷付けた相手が『お前なんか消えろ』って思ったら、自分も死ななきゃいけなくなるよ?
誰のことも苦しめずに傷付けずに生きていくことなんてたぶんできないと思う。そんなことができたらそれこそ本物の聖人君子じゃないかな。
人間ってね、自分は何も悪いことしてないと思ってても、どこかで誰かを何かの形で苦しめたり傷付けたりしてるもんなんだ。
お祖母ちゃんだって、別にわざとあんな人と結婚してお父さんを苦しめようとした訳じゃないと思う。お祖母ちゃんはお祖母ちゃんでただ一生懸命生きようとしてただけなんだと思う。それを、『迷惑を掛けられた』からって生きてることさえ許さないっていうのなら、たぶん、お父さんだって生きてちゃいけないと思うよ。
だって、ママのことを守れなかったんだから……
ママの元々の家族からしたら、お父さんはママのことを守ってあげられなかった<最低な男>だよ。たぶん、『どうしてあの子じゃなくてお前が死ななかったんだ!?』って思われてるはずなんだ……
ママを守ってあげられなかったことを、ママの元の家族の人達には許してもらえてない。
でも、だからってお父さんは死ぬわけにはいかないよ。少なくとも今はね。
まあこんな風に、お父さんだって誰かからそういう形で恨まれたりしてるけど生きてるんだから、お祖母ちゃんのことだって、心からは許せなくても別にいがみ合って生きる必要もないと思ってるんだ。
それに、美智果にとってはいいお祖母ちゃんだもんな」
だって。
これも私にはまだ難しいけど、パパが言いたいことは少し分かる気もする。私にとっては<リンちゃん>がそういう相手かな。リンちゃんが私にしたことは許せないけど、だからって死ななくちゃいけないようなことじゃないもんね。
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