一座
「私たちで踊り子一座を結成して、興行しながら教団領へ入るのです」
アポロさんが手を打って、
「名案です、イシュタル様の踊り子なら、必ず評判になり教団から接触してくるでしょう、ごく自然に」
「なぜ私たち、四人なのですか?」
「私とビクトリアとアナスタシアは、顔が知られているので表には出られません。したがって表に出て、踊り子になるのは、必然的に残る方となります」
「それに巫女様の、踊り子姿を見てみたいので」
私はダフネさんの案に、抵抗しようとしています。
だってこのままでは、どのような踊りをさせられるか、分かったものではありません。
「でも、私が公然と踊り子をしたら、後々困りませんか?」
「黒の巫女はその昔、踊り子をしていた、そのように云われても大丈夫なのですか?」
「巫女様、どのみち巫女様は神の前で、踊りを捧げることになります」
「それに今回は、復活した大賢者が黒の巫女を認める、との方針に決まったはず、その指名にはエラムの世界ではだれも逆らえません、ご心配には及びません」
「それにお顔の美しさは隠せませんが、印象は化粧で何とでもできましょう」
いや、そうではなくて、心配は貴女とその後ろで、何か妄想をたくましくしている皆さんです。
アポロさんが、
「たしかに黒の巫女様は、舞踊がお上手なほうが何かと便利ですし、女神様の為に踊れば、大衆を惹きつける上でも好都合というもの、一般大衆の意識を操作する上でも、イシュタル様には踊っていただきたい」
だんだん逃げ道がなくなってきます、せめて……
「では、神に捧げる舞踊を踊ればよろしいのですね」
「できれば大衆に受けるような物も踊っていただきたい。そうですね、少し魅惑的なものをお願いしたいのですが?」
これはだんだん不味い方向へ向っていませんか?
「でも、私はこの世界の踊りは知りませんが」
と最後の抵抗をしてみます。
ダフネさんが、
「興行上、異邦の踊りは大いに結構、巫女様の世界の踊りでよいかと思います」
「幸いジャバ王国は島国、そのつてで、名も知らぬ島々の踊りとでもすれば不思議はありません」
「それにこの世界の踊りなら、サリーが踊れるはずです。アテネもなにか踊れるでしょう?」
「私は剣舞なら自信がある」
確かにアテネさんの剣舞は見事でしょうね。
サリーさんが、
「では、私とアテネさんで、お嬢様の前座をつとめましょう。お嬢様、ここらが潮時ですよ、駄々を捏ねないように」
万事休すです、私はすこすご白旗を揚げました。
盛大にため息をついた後、
「分かりました、出し物を相談いたしましょう」と、言わざる得なくなりました。
小雪さんが、
「私にいい案があります」
「マスターの踊りですが、二つ踊っていただいてはどうでしょうか」
「一つは神に奉納するための踊りとしてオディシー、一つは先ほどから抵抗されていますが、殿方を多少挑発する踊りとしてベリーダンス、いかがでしょう」
オディッシーって、確かインドの古典舞踊でしたね、クリシュナ神話を題材にとっていると記憶していますが……
上半身の動きが叙情的、官能的であると何かの本で書いてありましたが、まぁ、これはいいでしょう、確かに神に捧げる踊りです。
でもなんでベリーダンスなんですか!
私が複雑な顔をしていると、
「本当はマスターには、フレンチカンカンを踊っていただきたかったのですが、これはさすがに却下です」
と恩着せがましく云ったりしています。
小雪さん、なんなら二人でお尻をめくって見ますか。
私が小さく毒づいていますと、
「マスターとなら、喜んで殿方を悩殺してみせます、お望みなら、マスターの前でストリップなる踊りをいたしましょうか?」
「それにベリーダンスなら、素顔を薄絹でそれとなく隠せます」
これで決定しました。
小雪さん、どこでそのような情報を仕入れるのですか。
「アリスがマスターの部屋を漁るので、その情報を」
「アリスさん、後で念入りにお話があります、覚悟しておきなさい!」
「小雪さん、ストリップってどんな踊りです」
アナスタシアさん、皇女様がそんな踊りに興味をもたない!
「殿方の前で、音楽に合わせて一枚ずつ服を脱いでいく、悩殺の踊りです」
「殿方は鼻血をだして喜ぶと、聞き及んでいます」
「では、イシュタル様の前で、そのストリップなる踊りを踊れば、私も可愛がってもらえるのでしょうか?」
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