買い物


 さて、私たちは、ダフネさんにいわれてキリーの町に来ました。

 なぜか今回はジャバ王国の首脳陣と、パスポートキー所持者全員、小雪さん&アリスさんなど本当に関係者です、そこにミハエルさんも呼ばれています。


 マリーさんとニコルさんが、せっせと料理を作っています、だって私を除けば後の人の料理は最悪ですから。

 特にダフネさんの料理を知っているニコルさんは、猛然と作っています、ダフネさんに作らせないために。


 皆さんは何の会議か、知っているようですね。

 どうやら私一人が蚊帳の外ですか。


 ダフネさんが、

「さて、根回ししたことに対して、皆さんの了承は得られています」

「巫女様、これからいうことを、実行していただきます、これは今後、大事なこととなります」


「まず巫女様には、売りに出ているアムリア帝国第一皇女を、ジャバ王国女王イシュタルの名の下に、愛人として購入していただきます」


「次に第一皇女と、イシュタル女王のハネムーンのためといって、このキリーの町に迎えます」

「そして第一皇女とイシュタル女王のために、ジャバ王国がアムリア皇帝にお願いして、キリーの町の施政権を購入いたします、あくまでも施政権です」

「多分この時点で、キリーの町は自治領となります」


「巫女様はこんな荒唐無稽なことがと、おっしゃるでしょうね」

「しかし、第一皇女は現王妃に疎まれて、しかもご自身で懸命に隠しておられますが、お身体が長くない状態です」


「また、イシュタル女王の愛人になるということは、皇位の継承において、第一皇女の血筋は途絶えることになり、王妃に取っては好都合です」


「次に施政権のことですが、アムリア帝国に取ってキリーの町など、どうなろうがどうでもよいのです」

「しかし父親のアムリア皇帝に取っては、第一皇女は実の娘、ジャバ王国が後ろ盾になって守る訳です」


「王妃の手が、来ないように配慮するには、この申し出が一番現実的です」

「現アムリア皇帝はかなりのご老体、しかも後宮へ入り浸たり、政治を顧みない生活をされていますが、やはり娘は可愛い、ご自分のなき後のことを考えると、イシュタル女王の愛人への申し出は、娘を守るについては一番確実」


「いざとなったら、ジャバ王国に逃げ込ませれば、海に守られている関係で、ジャバ王国が陥落することはないと読むはずです、一番の問題は巫女様がこの案を、なかなか呑まれないと考えられます」


「ただでさえ私たちに、申し訳ないと思われている節があります、そこで皆に根回ししたのです」

「アテネはまだ来て間もないので、根回ししていませんが、アテネごめんないね、あとの皆は了承しています」


「この機会に、巫女様におかれましては、女が女の愛人を持つことが、このエラムでは、何ら変ではないということを認識していただきたい、ごく普通の関係なのです」


「最後に巫女様に考慮して欲しいのは、第一皇女は長くない状態だということです。巫女様だけが、お身体を治療することができるのです」


「逃げ道は、全て封じられたのですね、分かりました」と、私は白旗を掲げました。

 突然、アテネさんが、「イシュタル様を困らせるものは許さん!」といって小太刀を抜き放ちます。


「アテネさん、ありがとう、でも皆は私のことを思って云ってくれているの」

「嫌なことでも、やらなければいけないこともあるのです、アテネさん、お願い、刀を納めてください」


「イシュタル様、そうなんですか、私はイシュタル様が望まないことは許せない」


「ありがとうアテネさん、でも刀を納めなさい」

 私がアテネさんを抱きしめると、アテネさんが「イシュタル様」といって泣きだして、ニコルさんに別室へ連れて行ってもらいました。


 皆がアテネさんへ、優しい視線を送っていました。


「さて、ではどのような手筈で、これをおこなうのですか?」


 アポロさんが、

「それについては簡単です、私とトールが、アムリア皇帝へ拝謁して話を進めます」


「もう各所に、それなりの金を撒いています。イシュタル様はこの町で、ゆるゆるお待ちくだされば、良いと思います」

「小雪さんには、護衛と第一皇女の話し相手として、ついてきてもらいます」


 ところで代価はどうするのですか?


 アポロさんが塩の袋の山を見せました。

「イシュタル様のおかげで、ジャバ王国の財政はかなり好転しています。できたら風車の技術と、製塩法は国家機密でお願いします」


 この後、ミハエルさんが、

「魔女さんもいよいよ体力勝負じゃな、マリーさんにはいつ手を出すのか、孫娘も待っているぞ」

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