緊急事態
衝撃の事実を受けて、落ち込んでいたおれだが、考えようによっちゃ悪いことではないかもしれない。
なんせ、ステータスやスキルという、特殊な能力を持つユースケに莫大な貸しを作れたのだ。
それに間接的にだが、勇者とも繋がりが出来た。
変に敵対してしまうよりは、ずっといい。
借金だって、ユースケはちゃんと返すと言っている。
ここはその言葉を信じて、気持ちを切り替えよう。
「そういえばユースケ、迷宮都市コサイムへ行く話だが、大丈夫なのか?」
「大丈夫って、なにが?」
「いや、ユースケは出来るだけ王都には近寄りたくないんだろ? 北の迷宮都市コサイムへ行くには、一度王都へ寄ることになるぞ?」
「え? そうなのか?」
「もちろん直線的に旅をする事も出来るが、道は整備されていないし、途中に村なんかもないから、補給に困る事になる」
それに、おれは出来れば王都を観てみたいんだ。
自分の国を作る時の、参考になるかもしれないからな。
「うーん、そうかぁ。まぁ大丈夫だろ。王都を避けてるっていっても、おれが勝手にそうしてるだけだしな。実際、王様からなにかされた訳でもないし」
「そうか。なら王都へ寄って、コサイムへ行くルートで決まりだな。出発はいつ頃にする?」
「早くランクアップしたいし、近日中がいいな。冒険者ギルドへ行って、王都への商人の護衛依頼がないか、見てみようぜ? サンドリザードの解体も終わってるだろうしさ」
「そうだな。一度冒険者ギルドへ行くか」
おれは大金貨が入った袋を、新しく作ったアイテムバッグへ収納し、ユースケと共に冒険者ギルドへ向かった。
◆◆◆
「あ、アルさんユースケさん!」
冒険者ギルドに着くと、エリスが出迎えてくれた。
もう戻ってきていたようだ。
だが、なにか様子が変だ。
「大変なんです! さっき狩りから戻った冒険者によると、ゴブリンの軍勢が南の森からこの街に押し寄せてきてるって!」
「なに!?」
「なんだって!?」
ゴブリンの軍勢だと!?
エリスが前言ってた、異変というのが当たったという事か!
だが何故この時まで気付かなかった!?
エリスは森を探索する依頼を出すと……糞っ!!
エリスは三等級向けの依頼だと言っていた。
だがその三等級冒険者のガントルをカエルにしちまったのは、おれじゃないか!!
「エリス、ゴブリンの軍勢はどのくらいの規模なんだ?」
「分かりません。知らせてくれた冒険者の方は大怪我を負っていて、ゴブリンの軍勢がこの街に迫っていると伝えると、気を失ってしまって……。今、斥候を出しています。そして衛兵へも伝令を」
エリスが言い終わる前に、外からけたたましい鐘の音が響いてきた。
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