巻き込まれ

 "召喚に巻き込まれた一般人"

 その項目を見た時ユウスケはショックを受けなかった。


 いや、嘘だ。

 そうなんじゃないかと予想はしていたが、やはり多少ショックは受けた。


 ユウスケだって男だ。

 それもラノベやアニメに興味を持つ男だ。

 やはり、勇者にはあこがれはあった。


 だが、ラノベなどに興味を持っていたからこそ、その程度のショックで済んだ。

 なぜなら、巻き込まれ系と呼ばれるジャンルにおいて、巻き込まれた一般人の方こそが主人公だからだ。


 最初は役に立たないと思われても、実は後に凄い活躍をする。

 そんな主人公に、ユウスケは憧れていた。


 それが現実になったのだ。

 立ち直りが早いどころか、内心興奮すらしていた。


「王様、なんだかゲームみたいに色々とステータスが出てきました。それによると、僕の称号は"勇者"で、ユニークスキルというのが"聖剣召喚"になってます」


 ユウスケが考え事をしているうちに、マサヨシたちは落ち着いたようだ。

 王にステータスオープンの効果を報告している。


「ほう! 聖剣、そしてやはり勇者か! 素晴らしいぞ! フーカたちはどうなんだ?」


「わ、私は"聖女"で、ユニークスキルは"回復力上昇"でした!」


「聖女か! 勇者の共に似合う素晴らしい称号だ!! アヤとスイレンはどうだ?」


「私は聖魔術師"で、ユニークスキルは"魔力使用量減少"でした」


「私は"剣聖"で、ユニークスキルが"剣速向上"だな」


「聖魔術師に、剣聖か! 素晴らしいパーティだな! ヨースケ、そちはどうなんだ?」


 名前を間違えつつ、王がユウスケに尋ねる。

 その言葉にユウスケは慌ててスキルの欄を見て答える。


「お、おれは、"召喚に巻き込まれた一般人"で、ユニークスキルは"アイテムボックス"です!」


「なに!? 一般人だと!? それにアイテムボックスというスキルは……アイテムバッグのようなものか? むぅ、差し詰め勇者の荷物持ちといったところか……」


 王のその言葉に警備の兵たちが笑い声を漏らす。

 ネフィアやマサヨシ達もあからさまではないが、笑いを堪えているようだ。


 だが、肝心のユウスケは、チャンスだと思った。

 これを理由に、王城を出ようと。


「王様、どうやらおれは、勇者やその仲間ではないようですし、マサヨシ達の足を引っ張るのも心苦しいので、城を出ようと思います」


「なに?」


「ユウスケ、君は……」


「いいんだ、スドウ。王様、どうでしょうか?」


 ここが正念場だとユウスケは気合を入れた。


「うーむ。まぁ、荷物持ちなどいなくても、アイテムバッグを貸し出せばよいしな……。ヨースケ、そちの発案を認めよう。衛兵! ヨースケを城の外まで案内してやれ!」


「ハッ!」

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