第36話 星は輝く
「そうちゃん、おはよう。」
朝、いつものように中庭にでた。
そうちゃんはストレッチの最中だった。
「おう。香澄。ちょっと話がある。」
話?珍しいな?
私はあまりいい予感がしなかった。
だって、今日は同じように話があるって史華ちゃんと約束している。
「話?ちょっと怖いかも。でも、話して。」
私はそうちゃんの目の前に腰を下ろした。
「おう。昨日な、史華に告白した。で、付き合うことになった。たぶん史華からも話すとは思うけどお前には俺から言いたくてさ。」
「・・・。」
「香澄?」
「・・・うん?」
わかってたよ。
そうちゃんは私を異性として見てくれてないもん。
わかってたよ。
史華ちゃんとは友達だもん。
わかってたよ。
そうちゃんは幼馴染だもん。
「そうちゃん?私ね、こうなると思ってたよ?そうちゃんが私以外の誰かと付き合うって。絶対絶対、私を選んでくれないって。」
妹だって。
家族だって。
でも私が欲しいのはそんなのじゃないんだよ?
「そうちゃん。これまで通り一緒に走っていいよね?」
「・・・おう。」
「うん。」
絶対泣かない。絶対泣かないから。
私は顔を上げてそうちゃんの目をじっと見た。
そうちゃんはちょっと困ってるかな?
「そうちゃん。私諦めないよ。」
私は今から決意表明するからね。
「少し前まではそうちゃんに避けられていた。でも、今は昔みたいになってる。これってマイナスから0になったってことだよね?」
「・・・。」
「私ね。もう失う物なんてないと思ってるの。だからね後悔したくない。そうちゃんが誰と付き合っていても私はそうちゃんが好き。これだけは一生変わらない。絶対に!
だから私は諦めない。」
「香澄。でも、それは。」
「そうちゃんが心配することはないよ?私ね、史華ちゃんも好きなんだ。大切な友達なんだ。だからね、邪魔はしないよ?」
そう。
史華ちゃんは私の友達。
だから悲しませたくない。
「そうちゃん、私は宣言します。私はそうちゃんを一生愛し続けます。でも今は史華ちゃんに譲ります。私はそうちゃんの妹じゃない。私はそうちゃんの家族じゃない。まずは異性と認識させるから。」
私はそうちゃんを指差して宣言した。
「そうか。相変わらず馬鹿だな。」
そうちゃんが苦笑いする。
優しく。
「いつか本当の家族になるから!そうちゃんが旦那さん。私が奥さん。子供は男の子と女の子の双子。これが私の未来確定図だよ。」
♢♢♢♢♢
「ごめんね。お待たせ。」
香澄ちゃんが小走りで私に駆け寄ってきた。
「時間ぴったりだよ。暑いから行こうか。」
香澄ちゃんは白のTシャツにデニムのショートパンツ。スタイルがいいからすごくかっこいい。すれ違う人が香澄ちゃんを見て振り返る。
駅前のカフェのテラス席に案内されて私達は向かい合って座った。
「香澄ちゃん、使われたね。」
「私はパンダか!」
宿題は終えたかとか、夏休みどこか出かけたかとか今の私達にはどうでもいい話を少ししてから本題に入った。
「あのね香澄ちゃん。」
「おめでとう史華ちゃん。」
え?香澄ちゃんは真っ直ぐ私を見て微笑んでいる。
「朝、そうちゃんから聞いたよ。」
うん。総士から連絡もらった。
「あのね、私が選ばれないのはわかってた。そうちゃんは他の誰かを選ぶって。で、最近それは史華ちゃんだって思ってた。」
「香澄ちゃん。」
香澄ちゃんが私の手を両手で包み込んだ。
「私は史華ちゃんの友達だよ?史華ちゃんがどんな子かわかってる。だから史華ちゃんが望めばそうちゃんの隣に立てるって。」
香澄ちゃんの笑顔に涙が滲んだ。
「ごめんね。ちょっとだけ泣いちゃうけど気にしないで。」
無理だよ。私だって泣いちゃうよ。
「史華ちゃん?一つだけ許して欲しいの。」
「なに?」
「うん。私、そうちゃんを諦めたくない。だから、そうちゃんを好きでいさせて?」
「香澄ちゃん。」
「でも、絶対に邪魔したりしないから。史華ちゃんが悲しむのは嫌なの。だって史華ちゃんは私の友達だもん。」
香澄ちゃんが優しく微笑む。
「でも、私は一生そうちゃんしか好きになれない。だから今は史華ちゃんに譲ってあげる。これは私のライバル宣言だよ。」
「うん。わかった。でも今のところは私がリードしてるからね。」
私も負けずに笑いかけた。
すると香澄ちゃんが顔を近づけて小声で、
「ひ、ひょっとしてもうしちゃったの?」
と真っ赤な顔で聞いてきた。
「ち、違うから!付き合ってるって意味だからね!」
♢♢♢♢♢
香澄ちゃん
今どこにいるの?
雅
家だよ
行ってもいい?
いいよ。おいで〜
『ピンポーン』
「はや!」
まさかと思いインターホンを覗くとそこには香澄ちゃんが佇んでいた。
「いらっしゃい。入って〜。」
私の部屋に香澄ちゃんを待たせてキッチンで紅茶を用意する。
「お待たせ。どうしたの?」
テーブルに紅茶を置くと、香澄ちゃんが飛びついてきた。
「みやびちゃん、私振られちゃった。」
香澄ちゃんは俯きながら言ってきた。
「そっか、また振られたか。」
香澄ちゃんを抱きしめながら頭を撫でる。
「うん、彼女ができたんだって。」
「え?ひょっとして史華?」
最近の2人を見ていれば纐纈くんと史華が惹かれあっているのは気づいていた。
「さっきまで史華ちゃんと会ってたんだ。ちゃんと祝福してあげたよ。」
香澄ちゃんの瞳が濡れている。
「うん。偉かったね。」
ふとテーブルの上に置かれた香澄ちゃんのスマホが目に入った。
「あ、この前のお祭りで買った星のモチーフのスマホケース使ってるんだ。」
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