第52話それぞれ6
『あんた親の恩を忘れている!』
朝一番叫ぶように携帯がかかってきた。母だ。携帯を掛けて来たのは初めてだ。父が断れなくて携帯を教えたのだろう。10分ほど喚き散らして切った。
「大変ねひろし君も」
かえでが布団から顔を出して言う。病院で母を見ているからよく分かるようだ。最近はセックスを私の方が控えている。やはり見ていて調子が良くないのだ。
「店は当分休んだら?」
「それは言わない約束よ。私は精一杯余命を頑張る」
「分かった」
最近かえでは朝私と同じに起きて朝食を食べる。それから寝ずにブログを描いている。私の方が追い付けないでいる。なぜかひどく急いでいるように見える。
「昨日店でお父さんに会ったよ」
「ああ、店で雇ってもらったのだ」
「たまに抱いてあげようかな。ひろし君が抱いてくれないから」
「ダメだ」
「それと雑誌社から今の新作課金にしたらどうだって?」
「課金?」
「有料にするって」
「見てもらえるのかなあ?」
「大丈夫だって」
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