第49話それぞれ3

 昼に支店長室で本店の年配の検査役と面接だ。朝は平さんが半日面接を受けていた。

「彼は否定しているが君はどうだ?」

「私は引き継いで間がないのでよくわかりません」

 結局これが私の答えだ。だが感じているものがあるがそれを口にすべきではないと思っている。終わると昼を抜いて自転車で飛田の平さんの店に走る。

「どうだった?」

 平さんが椅子に掛けてお茶を飲んでいる。

「支店長も、検査役も取引先に会って確認する気はありません。何しろ大口先ですから」

 ヒヤリングだけで取引は切れ賠償金を求められるかもしれないのだ。あくまでも内々のことで解決したい。

「君には真実を話すよ」

 彼女が心配そうにコーヒーを入れてくれる。店には客はいない。

「串カツ屋の会長の通帳から始め毎月5百万をこちらの頼母子の支払いに使っていた。会長は残高しか見ない。それがいつの間にか2千万になった。だが去年からもう繋ぎ資金は必要ではなくなった」

 それも調べて分かっている。この店を買って苦しかった時期は終わっている。こちらの頼母子も手持ち資金で賄えるようになり、小口の貸金も始めている。

「要求はあるか?」

「今この店でアルバイトの店員を募集していますね?」

「ああ、店の洗いと私の方の集金をしてもらおうと」

「親父を雇ってもらえませんか?」

「履歴書を持ってきてもらおうか?」

 話が終わった時に女の子が3人入ってきた。その一人が楓だ。かえでは気づいているが声をかけない。

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