第45話すみれ10

 朝かえでが蹲っている。

「どうした?」

「見ないで!」

 顔が真っ白だ。パジャマのズボンが鮮血に染まっている。

「救急車呼ぼうか?」

「時々あるから心配しないで」

「病院に行けよ」

と言って追い出されるように銀行に出る。

 3時にかえでからメールが入って病院に行ったとあった。店は休むとのこと。今日は4時に飛田のあの店で集金があるというので出かける。2階に上がると広間に8人ほど男女の年配人たちが座っている。テーブルにはビールやお酒が並んでいる。私は平さんに紹介されて座る。

 どうもここにいる人は顔見せの主人たちで女の子の金をまとめて頼母子に来ているようだ。集まった金は2千万ほどある。私が袋を確認して入金の記帳をする。平さんは手を上げた人に用意していた札束の入った袋を渡す。

 私は自転車なのでお金は預からず一度銀行に戻り両替に走る。7時にいつも通り戻ると平さんはもう帰ってしまっている。

『今おかんお店にいる』

 かえでからだ。何を考えてるんだ。慌てて銀行を出た。

 おかんの店の暖簾を潜ると、定席にかえでがビールを飲んでおかんの不良の親父と話している。おかんは私を見ると親父を引き離す。

「ビールは辞めろよ」

「気付け薬よ」

「ダメだよ」

「生きている間は好きなようにさせて」

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