第7話 母親学級の話
さて、母子手帳交付の時に母親学級を紹介された私。
ほとんどが平日開催だったため参加できなかったのですが、一つだけ日曜開催のものがあり、夫や家族同伴OKの回だったので、夫婦で参加することにしました。
メインは赤ちゃんのお風呂の入れ方の実演と、重りのついたリュックみたいなのを旦那さんのお腹に着けさせる妊婦体験。
中には旦那にどうしても妊婦体験をさせたいので無理矢理連れてきました! という気合いの入った(?)妊婦さんもいました。
会場は市民会館的なところで、母親学級の隣りの部屋では防災教室をやっており、そこではお爺ちゃんお婆ちゃんが避難ルートを確認したり保存食を試食したりしていました。
防災ベストを身につけたお爺ちゃんお婆ちゃんたちの群れをくぐり抜け部屋に入ると、そこには十人ほどの妊婦が。
家族同伴OKなので、夫ではなく母親や義母を連れて来ている人もいましたし、夫婦と母親三人で来ている人もいました。
母親のうちの一人は、「今の出産と昔の出産では常識が違うと聞いているので新しいやり方を学んで娘を助けたい」と言っていました。なんて偉い!
うちの母親だったら絶対「昔のやり方でもアンタは死んでないんだから大丈夫!!」とか言って頑なに新しいやり方を受け入れなそうなのに~!
中には言葉のたどたどしい東南アジア系の外国人の妊婦さんもいました。
市役所の書類や病院の説明、全て日本語なのに、この人は大丈夫なのかな、こんな田舎に通訳の人とかいるんだろうか、検診には毎回旦那さんがついていってるの? と他人なのに見ているこっちまで不安になってきました。
もし自分が言葉の分からない外国で出産することになったらと考えてみると、ただでさえ妊娠なんて分からない事だらけで不安なのに、その上お医者さんの言ってることが分からなかったり、書類が読めなかったら怖いですよね。
それでも慣れない異国で出産しようという外国人の妊婦さん……なんて偉いんだ。
そして参加メンバーを見て思ったのは、みんな意外と年上だということ。
40代だと言うお姉様たちが
「私は高齢出産だから不安で~」
「あら、私もよ!」
なんて話をしていて、今や三十代後半、四十代での出産はあたりまえ、三十代前半で若いママ、二十代は希少価値みたいな感じの雰囲気でした。
よく考えたら滝川クリステルも42歳で出産してますしね。医学の進歩のたまものでしょうか……?
さて、母親学級が始まり、まずは入院に必要なものの説明や出産の流れなどの説明がありました。
ここら辺は市役所や病院で貰った冊子にも書いてあったのでふむふむと言った感じだったんですが……
講師の方の一言でえっ!? と思いました。それがこれ。
「入院する前に、旦那さんにゴミ出しの日を教えておいてくださいね。あとは、野菜をカットして冷凍しておいて、チンするだけでできるレシピを旦那さんに渡しておくといいですよ。入院中、旦那さんが困らないようにしておいて下さいね~」
はぁ!???
いやいや。ゴミの日ぐらい自分で調べろよ!
というか調べなくても普通分かるでしょ!
っていうか、還暦すぎたうたたの父親ですら即席のラーメンとかチャーハンぐらいなら作れるし~!
料理できないなら別にコンビニ弁当でもスーパーのお惣菜でもカップラーメンでもいいじゃん。
なんで今にも産まれそうっていう臨月の妊婦がそこまで旦那に気を使わないといけないんですかね。
わざわざ野菜をカットして冷凍とか、チンしてできる料理を調べてそれを旦那に渡しておくとか言ってて……面倒臭すぎ!!
そしたら隣にいた妊婦のお母さん、「旦那くんには私がタッパーご飯を持っていくから大丈夫よ~!」
旦那にはその辺の草でも食わしとけ!
思わずツッコミを入れそうになりました。
大変なのは妊婦の方で旦那さんじゃないのに、何でそこまで旦那さんに気を回すんですかね、小さい子供じゃないんだからさー。
なんだか納得できない~と思ってしまうのは私だけでしょうか。
そして始まった赤ちゃんのお風呂講座。
私は多少手順が違っていても子供が溺れて死ななけりゃそれでいいやと思いながら見ていたのですが、隣にいた旦那はめっちゃ細かくメモを取っていました。
こ、こいつ、やる気マンマンだわ……。
「それでは実際にやってみてもらいましょうか。旦那さん、良かったらどうぞ」
講師の方に指名され、旦那が人形を使って風呂入れの練習をすることに。
私はそれを横から見ていたのですが、何やら妙に視線を感じるような?
振り返ると、隣で防災訓練をやっていたお爺さんお婆さんが窓から見ているではないですか!(窓の外はベランダになっていて、隣の部屋と繋がっているのです)
結局、旦那は大勢のお爺ちゃんお婆ちゃんに見守られながら赤ちゃん人形をお風呂に入れることになったのです。
初めのうちこそ緊張していましたが、大量にメモを取っていたおかげか沐浴そのものはスムーズで、旦那は講師にも「上手いですね~」と褒められていました。
終わった後、旦那は少し自信がついたようで、沐浴は任せておけ! という感じでした。
実を言うと、私は出産後二、三ヶ月は実家にいる予定で、ベビーバスを使った沐浴は一ヶ月くらいで終わるそうなので旦那が沐浴をする機会は無いだろうな、と内心思ったのですが黙っておきました。
さて最後にいよいよ旦那さんの妊婦体験が始まります。
お腹に三キロの重りをつけた旦那は、とりあえず部屋を出てその辺をウロウロすることに。
――が、部屋を出た旦那はどこをほっつき歩いてるのか、中々帰ってきません。
やっと帰ってきた旦那に話を聞くと、どうやら防災訓練に出ていたおばさんやお婆さんに囲まれて「これは何?」「奥さん妊娠してるの? 何ヶ月?」「性別は? 予定日は?」と質問攻めにされていたそうな。
「重かった?」と聞くと、「走ろうと思ったのに重くて走れなかった」「階段を降りる時、下が見えなくて怖かった」とのこと。
普段からプールで二、三キロ泳いだり、ハーフマラソンを走ったり、筋トレを趣味にしているような男なので「全然重くなかった。こんなの余裕でしょ」みたいに言われたらどうしようかと思っていたのでホッとしました。
どうやら妊婦の大変さが分かったみたいです。
色々ありましたが、他の妊婦さんにも話を聞けたし、中々面白かったです。
都合のつく方は母親学級、出てみてはいかがでしょうか?
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