第4話 成長

 あまり目立たずに兄さんのために頑張る。


 そう決意したのは4年前か。運命とは実に残酷なものだ。


 入学して4年が経って10歳の私は理事長室に呼び出されていた。要件は分かっている。ステータス判定でやらかしたのだ。


「君は転生者だったね?」

「はい、そうです」

「そうか、私も転生者で色々な転生者を見てきたが君ほどの実力を持った者はいないだろう」


 そう、私は特典を多く貰っていたことを忘れ、同学年の数人の転生者ですら雑魚扱いするようなことをしてしまった。

 詳しく言うと、ステータス判定の儀式を行う場――協会ではなく学校の大講堂――で、自信のあった転生者の心に深い傷を負わせた。二人だけまじまじと私のステータスを見て何か話し合っていた。

 が、そんなことはさておいて私のステータスは、


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シオン・ヴァーゲル

女 人族 10歳 Lv.6

生命力:7500

魔力:2000

体力:1200

筋力:600

俊敏:600

スキル:身体強化(4倍)、成長率倍増、魔力増幅、剣術(A級)、体術(A級)、物理耐性、魔法耐性、愛情変換

魔法:雷属性魔法、氷属性魔法、水属性魔法、風属性魔法

称号:復讐者、転生者、

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 これが私のステータスだ。転生者でも私のステータス値の半分あればいい方。さらにスキルは良くて4つ、魔法は良くて3つなのだが。

 この時、私は悟った。やってしまった、と。あの女神に聞いても多少すごいくらいと言っていたのに、どこが多少だ。あの駄女神が、使えない。


 そうして今に至ると言うことだ。


「それで教えてくれるかい? なぜあんなにステータスが異常かを」


 隠す必要もないため、全てを話す。

 そしたら理事長の男が泣いていた。


「うっ、そんなに辛いことが……よし、私も出来る限り君の兄さんについて調べよう。カグラという名前の子供を探せばいいだけだからね」


 なぜか彼が協力することになった。こちらとしてはありがたいのだが、私はてっきり利用されるかもと心配だったが。まあ、協力してくれるのだ、十分に活用させてもらおう。


 理事長室を出て、教室に戻る。


「なあアンタ、ちょっといいか?」


 声がしたので振り返るとそこには先程、私のステータスをまじまじと見ていた男女二人がいた。

 とりあえず何もなかったように、教室に戻る。


「おいおい、待ってくれ! 今、俺たちのこと見たよな!? 見た上で無視は酷くないか!? って、また無視か!? 頼むから話をさせてくれ」

「はあ、何ですか、いきなり」

「ここじゃなんだ、空き教室に行こう」


 後は帰るだけだったので仕方なく彼らのあとをついていく。

 道中、帰る人を見て、早く帰りたいなぁと思っているうちに空き教室に着いた。


「それで話ってなんですか」

「ああ、まず一つ聞かせてくれ。お前は、暁 紫苑、か?」

「っっ!? なぜその名を……」

「やっぱりアンタだったか」

「あなたはいったい……」

「俺は坂井 優介。今はユー・ヴァイス、じゃ分からんか。前世にアンタの兄、神楽をいじめてた奴らの男子リーダーでアンタに最初に殺された男だ」

「私は白木 莉子。今はリコ・シルフィー。神楽をいじめてた奴らの女子リーダーで最後に殺されたわ」


 直後、空間が歪曲しそうなほどの殺気を出す私。余りの殺気に二人は息が出来ず膝をつく。教室の机や椅子がミシミシと音を立てている。

 一度落ち着き、殺気をとく。


「俺らを殺すなら好きしてくれ。それだけのことをした自覚はある」

「アタシもよ。でもあなたにお願いがあるの」

「どうか俺らも神楽を探す手伝いをさせてくれ」

「殺された時に初めて気づいた、神楽の苦しみを。あいつもあんなに痛くて苦しかったのかなって」

「だから決めたんだ。俺たちはあいつに会って謝罪をして、一生をかけてあいつに償う、と」


 この男と女は根が真面目で優しかったのか、まともなことを言う。


「それなら私も手伝わせてほしい」


 教室の扉が開かれ、一個上の先輩らしきメガネをかけた人が入ってくる。


「私は天津川 良。今はリョウ・アールヴだ。神楽をいじめていたメガネをかけた奴だ。殺してくれても構わないがどうか手伝わせてくれないだろうか」


 また一人加わった。


 私は考え込んだ後、結論を出す。


「それなら手伝ってください」

「いいのか!? 全身全霊をかけて手伝わせてもらう」

「アタシも命をかけて探し出すわ!」

「私も知識の方で手伝わせてもらおう」

「ええ、死ぬまで頑張ってください」

「……しかし、俺が言うのもなんだが殺さなくて良かったのか?」

「あなたたちへの復讐は終わりましたから。まあ、裏切ったら殺しますが」

「そうか、本当にすまねぇ」

「本当なら今すぐにでも八つ裂きにして魂ごと滅ぼしたいですけど」

「お、おお、そうか」


 彼ら3人が私の下僕になった。



 それからの学校生活は何事もなく……とはならなかった。例えば、休日に領都に大量の魔物が押し寄せたものを私のチートで食い止めたり、学校を犯罪組織が占領し人質に取られたが領都の本拠ごとチートで滅ぼしたりしたがここでは割愛する。


 そんな決して平穏とは言えない生活を送ったが、学校は楽しかった。初めて友達を作ることができたり両親と暮らしたり、前世ではできなかった体験ができた。


 しかし、どんなときも兄さんのことは忘れなかった。

 私たち4人は出来る範囲で兄さんを調べる準備をした。理事長も独自に調べてはいるが何の発展もない。

 兄さんは必ずこの世界のどこかにいる。理事長が調べていないということは、この街にはいないことは確かだ。

 なのでここを無事卒業できたら世界中を探し回ることを再度決意する。この街にいるならばわざわざ世界を回る必要はないが、いないとなればたとえ地獄だろうと探す。


 その硬い決意を胸に、学校生活を送った。

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