第158話 依存症者の告白(158)
まったく、自分と完全に「合う」人など、この世にいないのだ。
また、合わない人との交流の方が、自分の意見を真剣に伝えようとして、相手に向き合える。
「合っている」と信じれば、「違い」が生じた時、より大きく見える。もともと、違っているのだし、自己と異なる存在が他者であることを、忘れずにいたいものだ。そこから、相手を尊重し、尊ぶことが、初めてできる。
それにしても、なぜ「合う」人間を求めようとするのか。一緒にいて、ラクだから? しかし、それにも、飽きが来るだろう。ひとつ叶えば、また別の欲が頭をもたげる。
〈年を取るのは素敵なことです〉
その根拠は、生命には限りがあることを、身をもって感ずることができるからだろう。まだ、まだ生きるのだと、まるで死なないように思っている間は、欲の限りを尽くそうとする。
もう、そのように生きても仕方あるまい、と、微笑みながら歩いて行きたいものだ。その伴侶は、恋人でも友達でもなく、自分自身であるのだとして。
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