第155話 依存症者の告白(155)
シルヴァスタインの「ぼくを探しに」という本がある。帯には、「大人のための絵本」とかあったのは気のせいか。
この「ぼく」は、丸い線と、三角の線だけの存在である。丸の中に、点がひとつ。この丸は顔で、点は眼。横顔なのだ。三角の部分は空間になっていて、口のようである。
「何かが足りない それでぼくは楽しくない」から始まって、「足りないかけらを探しに行く」物語。
この「ぼく」は、転がって行く。途中、とんがった三角を見つけ、その口にふくんでみる。小さな三角、四角いのを、口にはめてみたりする。どれも、しっくり来ない。
やっと自分に合う三角を見つけたが、きつくくわえすぎて、壊してしまったりする。
しかし、ようやくこれはまさにぴったり合いそうな三角と出会う。はめてみると、ほんとうにピッタリだ!「ぼく」は歓喜する。
だが、足りないかけらが埋まったために、「ぼく」は歌が歌えなくなる。丸そのものになったので、転がるスピードが速くなり、まるで世界が一転し、「ぼく」はつまらなくなる。
「なるほど、つまりそういうことだったのか」と「ぼく」は考える。
「ぼく」は、せっかく出会えたかけらをそっと置き、また転がり始める…という物語。
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