第143話 依存症者の告白(143)

「そう、いつか、みんな、死んでしまうからね」

「どうして死ぬんだろうね」

「聖書では、昔、200歳、300歳で生きてる人とか、ザラにいたそうだよ」

「ふえーっ。でも、そんな長く生きても、しょうがなくないか」

「で、だいぶ短くなったんじゃないかな」


「歴史は繰り返すからねえ。そのうち、また超長寿になるんじゃないか」

「つくづく思うんだけど、どうしてヒトって、死を厭うんだろう」

「というか、死について考えない人が多くなった気がするなあ。だから、生きることについても、あまり考えない、みたいな」

「不思議だなあ。みんな、死ぬというのに」


「考えてもしょうがない、っていうのはあるよね」

「でもさ、ほんとうに死について考えるなら、犯罪とか少なくなりそうじゃない? だって、みんな死ぬんだよ。お金とか、欲張ったって、しょうがないじゃん」

「死ぬってことへの、とらえ方だよね。どうせ死ぬんだから、好き勝手してやれ、っていうのと、自分も川の流れの一滴なんだ、っていうのと」


「でもさ、死について、どう考えることができるんだろう? 死んだことがないから、よく分からない」

「うん。分からないね」

「うん、分からない」

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