第142話 依存症者の告白(142)

〈むなしさについて書くことほど、むなしいことがあるだろうか〉


 モンテーニュは、その「むなしさについて」を書いている時、きっとむなしくなかったはずである。


 むなしさ。

 この正体は、何だろう。こちらが、何か表わしたものに対して、周囲が同調せず、あるいは何の反響もなく、何のためにそれを表わしたのか分からない、ひとりぽつねんとした情況に自分があることか。違う。それは、「不満」であることだ。


 不満は、自分の思い通りに事が運ばない時に生じる。

 むなしさは、何か不満を抱える自分自身をよくよく見て、ためいきが出た時、いつのまにかあなたの横にいる。


 自分の思うように事が進むなど、稀なことだ。だから、強欲で、あれもこれもに食指を動かす心ほどに、きっとむなしさを感じる…だろうか。


 心、まるごと、欲に捕われた者には、むなしさを感じる余地もない…だろうか。


 こんなことを考える時、私は、時間の存在を痛感させられる。結局のところ、時間差で、むなしさは顔を出すのだ。

 どんなにハッピーなことが起こった後でも、むなしさはやって来る。何をしても、むなしさはその後に、ついてくる。


 振り向かなければ、見えないものでもる。

 しかし、振り向かないでいられないのだ。

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