第135話 依存症者の告白(135)

 しかし私は、あまりに幸せな状態な時、不安になる。こんなに幸福でいいのだろうか、と。足が地に着いていない感じに襲われて。


 だからむしろ、幸せでない部分を自分から探す。探せば、いくらでも見つかる。絨毯の裏に、シャンデリアの上に、ドンペリの背後に。小人たちが、たくさんの顔をのぞかせて、こっちを見ている。


 虚構の世界は、はかない。ダンスが終われば、ドレスを脱いで、化粧を剥ぐ。疲れた。心地良さのかけらもない。


 何が不幸か幸せかも分からなくなってしまった。それで、床に線を引いた。もう、あっちの世界には行くまい。


 そしたら、それも疲れちゃった。

 あっちも、こっちも、同じだったんだ。私、同じだったんだ。

「どうしようもないね」知らない男が言う。

「あきらめて、あっちでもこっちでもない、そっちへ行こう」

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