第130話 依存症者の告白(130)

〈わたしは他者に、自分を貸すことはあっても、預けることはしない〉


 だが、整体師から手を当てられる時、私はこの身をかれに任せたものだった。

「ホ・オポノポノ」はかれの影響によるものだったが、かれ自身がホ・オポノポノだったわけがない。かれがかれなりに消化した、かれをかれとして在らせた1つが、オポノポノに過ぎず、他にもいろんな思想を持っていたと思う。


 椎間板ヘルニアと医者に診断された時、その医者の、あまりにも心なさそうな態度にムッとした私は、以前腰痛で世話になったこの整体師に、もう一度お世話になろうと思ったのだ。


 人柄も善く、施術中、いろんな話をして笑わされた。

「昔行ったセミナーで、『悟った人は、今頃山の中をひとりで笑って走り回っていますよ』っていう言葉が印象に残ってますねえ。他に、何も残ってないんですけど」

 とか言っていた。


 私の腰が治った時も、

「わたしが何もしなくても治ったんじゃないですかねえ」

 などと言う。


 近所にあって、心強い存在だったのだが、沖縄に行こうと思うんです、特にこれという根拠はないんですけど、と言って、いなくなってしまった。

 整体師の妹さんと偶然道で会った私の恋人の話によると、今は静岡にいるらしい。

 もう一度会いたい、素敵な人間のひとりだ。

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