第127話 依存症者の告白(127)

 そして今日も大安寺へ行った。やはり、いいお寺だと思う。

 今日も「癌封じ」の祈祷を依頼された方がいらっしゃったようで、お坊さんのお経の声や太鼓の音が、喫煙所に聞こえてきた。

 参拝者も、ちらほら。


 お寺の門をくぐる前に、私は心の中で「失礼します」と言って手を合わせる。だが、そこからは、10〜15mほど前方に、大きなクスの木が立っているのだ。クスの木に手を合わせているようで、可笑しくなる。


 基本的に、私は神仏を信じてはいない。ただ、手を合わせ、人間の手の届かない何かに、「ありがとうございます」とお礼を言いたいのだ。


 帰る際も、門を出てから手を合わせ、お辞儀をする。クスの木が、こっちを見ていた。私は、心からクスの木に敬意を表した。

 クスの木が、クスッと笑ったような、笑わなかったような。

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