第123話 依存症者の告白(123)

 20歳の頃、「ピースボート」に乗ったことがある。「世界一周の旅」をうたったポスターが、今も商店の軒先などに貼られているのを見る。


 私は、パラオ(ベラウ共和国)までのツアーだった。日本から、船で8日ほどかかったか。帰路は、飛行機だった。

 今は政治家になった、辻元さんもまだ大学生だったか。彼女がピースボートの発起人の1人だったようだし、乗船していたような気もする。


 船というのは、不思議なものだった。ひとつの村が、移動している感じ。まして「かつて日本が植民地化した国を訪ねる」わけで、それなりに平和とか反戦とか、考えている人が乗っていたはずだ。


 たしかに、船にはいろいろな人がいたし、現地では生々しい戦争の跡…跡というより、現存していた。サビ切った何かの兵器やらが、砂浜に、ずっと片づけられないゴミのように。

 戦争は、まったく終わっていないような気にもなった。


 約8日間(10日だったか?)乗船していて、私が一番気持ち良かったのは、プールサイドで日光浴しながら、ウォークマンでモーツァルトを聴いていた時間だった。


 船に揺られながら、素晴らしい太陽の光を浴てモーツァルトを聴いていると、

「そうだよ、戦う必要なんて無いんだよ」

 と、地球の空気から言われている気になった。


 今のピースボートがどうなっているのか分からないが、当時は、何かこだわりを持った、面白い人たちが多かったような気がする。今だって、誰でもこだわりを持っているだろうが、社会とか外へ向けてよりも、内へ内へと向いているこだわりでありそうなのも、きっと気のせいだろう。

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